【お世話になった皆様へ】
ご一読頂けたら幸いです。
本音で書いておりますが、演劇に出会えて良かったなと心から思っております。7月に空想笑年は解散公演を行います。自分に残った最後の火を灯して、作品を書き上げます。どうぞお越し下さいませ。
皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。 pic.twitter.com/HclTx6Vz7p
— 武石創太郎 TEAM空想笑年 代表 (@imagine_team) March 29, 2023
先日流れてきたツイート。
TEAM空想笑年が、代表武石さんの引退に伴い劇団の解散を決めました。
俺は直接絡んだことがなかった劇団だけど、名前はよく耳にしていて。
実は現在所属の方と今後絡む予定があったりなかったりということもあって、「あぁ・・」と神妙な想いを抱きながらこのメッセージを読んでいた。
(前略)
コロナ禍に入って約三年、心身共に限界を迎えたというのが端的な理由です。
マスクをしたままの稽古で顔を見ることも出来ず、感染防止で最小限の人としか関われず、稽古後の親睦会も叶わず、個人的には必要性を全く感じられない一斉PCR検査での自滅行為もせねばならず、公演後は打ち上げもなくそそくさと解散。
お客様は戻らず、チケット代は釣り上げざるを得なくなり、機材や人件費編集費が加わりコストが増すハズの配信が来場チケットより低単価になる風潮に疑問を抱き、半分以上が空席の劇場を眺め、助成金ありきでの興行に頼らざるを得なくなり、助成が通らなければ最終的に400万~500万の赤字で終わる。
シンプルに、生きていける気がしませんでした。このような情勢の中で、それでも楽しいと思える作品を創り出していく気持ちが、涌かなくなってしまいました。
(後略)
文章引用:https://twitter.com/imagine_team/status/1640954527523409921
コロナ禍に入ってから、たぶん演劇界のほとんどの人間が実感してきた内容だと思う。
あらゆる業界がコロナ禍で苦しんだわけだけども、その中で演劇は最も苦しめられた業界のひとつだった。
コロナによって課せられたルールが色々とあったわけだけど、中でも特に陽性者や濃厚接触者が出たことによる公演中止が本当にどうしようもなくキツいんだよね。
TEAM空想笑年はコロナ禍での公演中止が2回あるそうだけど、自分も緊急事態宣言で配信リーディング公演にせざるを得なくなったのが1本、あとは本番期間中に体調不良者が出たことで上演回数を4回削らざるを得なくなった公演が1本あった。
年に1~2回の頻度でしか板を踏まなくなった自分ですらそんなザマなので、もっと活動的で出演機会が多い役者であれば相当な回数の公演中止を経験しているんじゃないかな。
公演中止って、本当にダメージが大きい。
ある程度の逆境にはね、立ち向かえるんだよ。
コロナで制約やルールが増えたっていうなら、その中でうまくやれるようにいろんな試行錯誤をして。
当然いつもよりもお金も手間もかかるし、精神力もとてつもなくすり減るけど、それでも何とか己を奮い立たせてがんばれなくはない。
でも、本番直前一斉PCR検査で陽性者が出れば一発アウトで即公演中止というルール。
コロナがどんなに感染対策に神経質になっていようが平気で陽性反応を示す性質のものである以上、関係者全員に行う一斉PCR検査って、神に祈るしかない運任せのロシアンルーレットなんだよね。
これだけは努力では抗えないし、実際に喰らうと本当に心が根元からポッキリと折られる。
コロナ禍でも一生懸命頑張ろう、お客さんにこんな状況でも素晴らしいモノを提供しよう、そういう熱心な想いが強ければ強いほど、積み重ねれば積み重ねるほど、この公演中止という無慈悲な刃は骨身に深く食い込んでくる。
絶望、無力感、そして虚無。
劇団の主催の立場ともなれば、二度の公演中止による心の傷の深さ、そしてツイートでも書き綴っていた憤りは計り知れないものだったと思う。
想像すればするほどこちらもやるせない感情になる。
引退も劇団解散もこれから最後の公演を打ってからとのことなので、お疲れさまという言葉をかけるのはまだ早いけども。
でも、とりあえず今日までの様々な努力と苦悩におつかれさまと言葉をかけてあげたい。
(ここで何を書いてたって何の労いにもならないのが歯痒いけども)
そして、想っているモノをしっかりと発信したことについては立派だな、と尊敬と感謝を。
このコロナ禍の中で同じ思いで去っていった劇団や俳優は水面下で数多くいるはずだし、その大半がこういった悔しい思いや憤りをその胸に押し殺したままでいると思う。
そういったことを包み隠さず発信することを「マイナス発信」とか「去り際に不平不満や毒を吐いてる」みたいに捉え、引退事情について赤裸々に書くことを美しくないという人も一定数いるだろうけども。
でも昨今はアーティストが「夢を売る人の仮面」を被ったままお客さんと付き合っていくような時代はもう終わっていて。
強さも弱さも、カッコ良さもカッコ悪さも、そして抱えてる辛さも、そういった本音の部分を共有して近しい距離に立ち、その上で応援してもらう、推してもらう、みたいな双方の「ギブ&テイク」「テイク&ギブ」がこれからの時代の演劇のあるべき形なんじゃないかな。
武石さんの場合は引退だからあれだけど、続けていくなら尚更そういう部分は大切にしなきゃいけない気がする。
また、そもそも演劇界だと「引退宣言なんてしないほうがいい」なんて意見もある。
俳優活動や表現活動はやりたいとき or やれる状況になったときにふと再開することは全然できるわけだし、わざわざそれをしにくくする状況にしなくてもいいんじゃないか、的な理由みたいだけど。
けど、個人的にはその是非はケースバイケースかなって思ってて。
けじめをつけたい人もいるし、けじめをつけないと次に行けない人もいる。
引退宣言をすることで肩の荷が降りて楽になることもあるし。
鬱の症状を患ってしまった武石さんの場合であればそれは言わずもがなで。
引退宣言で自分の中でけじめをつける、それが自分のためになる。
それでいいんじゃないか。
本当におつかれさまでした。
身体を大事にしてゆっくり休んでください。
でも、いずれ症状が回復して、またコロナ禍の影響が完全になくなって演劇活動が通常通りに行えるような時代になったとき。
もし、あくまで「もし」の話だけれども、
もしいつか将来、胸の内に戻ってきたい衝動が生まれるようなことがあるなら、そのときは何の遠慮もなく戻ってきてほしいなと思う。
40代や50代になってから演劇やったって全然構わないのだから。
「引退してたけど復帰しましたー!」って、逆に生きることに前向きでカッコいいとさえ思う(笑)
また別に演劇でなくても、表現活動って多彩にジャンルがあるしね。
さらに最近で言えばAIみたいな、ああいう技術革新のおかげでこれまでなかった新しい表現道もどんどん増えていくのは間違いないし。
好きなことを好きな塩梅で無理なくやってく道も全然いいと思う。
あ、もちろん「もしそういう気持ちになったら」の話です。
「戻ってきてね!」って変な期待やプレッシャー与えたいわけではないので(苦笑)
重ねてになりますが本当におつかれさまでした。
解散公演、観に行こうと思います。
とりあえず残る側としてできることは、もはやただの世間体と体裁でしかなくなってきたコロナルールを1日でも早く無くしていくことかな。
(これは演劇に限らずあらゆる業界でそうだと思うけど)
マスク着用、検温、消毒、終焉後の面会なし、お客様の住所と氏名の回収、etc・・・のコロナ禍おなじみの各ルールだけど、話を聞くところでは強制ではなくなったものの、自治体や劇場からは強く「推奨」されていて実質強制に近しいのが現状らしい。
こればっかりは団体ひとつひとつが「デメリットの方が大き過ぎるので、あくまで推奨ってことならウチはしません。」と確固たる態度でいくしかないのかな。
ひとつひとつの行動を重ねてそれを多数派にして、それを常識にしていく。
終演後の面会なんかは少しずつOKになり始めてる印象があるので、それを起点にして早く他のルールの緩和も進んでいけばいいけども。
願わくば、これ以上僕のような演劇人が出ない事を切に願う。僕で最後にしてくれ。
これからの演劇人に、幸あれ。
— 武石創太郎 TEAM空想笑年 代表 (@imagine_team) March 29, 2023
こういった思いをする人が一人でも減りますように。
したらな。
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