【危険生物】ヤマカガシの生態と対策

ヤマカガシ

 

ヤマカガシッ!!

 

 

はい、なぜか演劇人が害獣や危険な生き物を開設する謎のコーナー。

第6回となる今回はヤマカガシでございます。

 

 

日本に生息する毒蛇は3種類で、マムシ、ハブ、ヤマカガシ。

ハブは沖縄にしかいないので、沖縄以外であれば毒蛇といえばマムシかこのヤマカガシってことになります。

マムシのほうが圧倒的に知名度は高いのですが、実はヤマカガシが一番毒強いんだぜ!

 

 

まぁ、ヤマカガシに咬まれるなんてのはまず滅多にないことではあるんですが、

一応の用心と心構えがないと命の危険もありえるってこと危険生物としてご紹介。

それほど怖い蛇じゃないけど、確かな知識で恐れておきましょー。

 

 

さぁ、ヤマカガシの生態。

はりきってどーぞ!




1.ヤマカガシとは?

ヤマカガシ

ヤマカガシは、爬虫綱有鱗目ナミヘビ科ヤマカガシ属のヘビの仲間です。

日本国内では北海道より南の地域で自然が豊かなエリアであれば、どこにでも住んでいます。沖縄や小笠原諸島のような本州から独立した島では生息していない場所もありますが。ヤマカガシはアオダイショウやシマヘビと並ぶ、我々の生活の中で比較的よく見られる日本の代表的なヘビの一種です。実は近年まで全く毒蛇だと認識されていなかったという、なんとも稀な経歴を持っていたりして。

ヤマカガシという名前の由来は、「山」にいる「カガシ(へび)」だからという単純なモノ。大体のヘビは山にいるような気もしますが(笑)

2.ヤマカガシの身体的特徴

①体長やシルエット

ヤマカガシ

ヤマカガシは、全長がおおよそ70cm~150cm程度の大きさになります。日本に生息するヘビとしては中型サイズでしょうか。鱗はキールと呼ばれる鱗の隆起が強く、実際にその体表を手で触るとかなりザラザラした感触があります。これはヤマカガシが生活の中で水中を泳ぐ機会が多いため、水中で素早く泳ぐためにそのように進化したのではないかと考えられています。ヤマカガシはまるで水面を滑るように移動するので、その動きに一役買っているのではないでしょうか。

よく「毒蛇といえば頭が三角形だ」なんて言われますが、ヤマカガシの頭部は、マムシやハブのように三角形ではなく比較的細く丸型をしています。目がクリッとしていてヘビとしては愛嬌がある顔をしているのも特徴のひとつ。ただしいくら可愛いからといっても飼育することは日本の法律では許されていませんので注意。そもそも毒あるしね。。。

 

②体の模様や色について

首周りには黄色いリング状の模様がついており、褐色地に黒・黄色・赤が交互に重なった鮮やかな体色をしています。とくに若い個体はこの模様が鮮やかである傾向が強いようです。この模様は警戒色と呼ばれ、自分が毒蛇であることを敵に知らせる役割を果たしています。

しかし、この模様は個体差・地域差が非常に多く、全体的に黒褐色が強かったり、鱗に赤い部分が全くなかったり、黄色のリング模様さえなかったりと、ときに他のヘビとの判別が非常に難しい場合があります。この場合は頭部の鱗の粗さや鱗のキールの強さなどで見分けるのがベター(※判別に自信がないときは触ろうと思わないでください)。

 

3.ヤマカガシの住みかと主食、天敵

ヤマカガシ

ヤマカガシは平野部、もしくは山間部の低い標高地域の水場に住んでいます。人間の生活圏に近い場所でいえば河川敷や田んぼなど。都心部ではなかなか見かけられませんが、田舎では普通に見かけるメジャーなヘビです。

水場に住んでいる理由は、好む餌がカエルや小型魚類など水の中に住む生き物であるためです。トカゲやオタマジャクシも食べます。ほかのヘビと違ってあまりネズミなどは狙わないようです。あ、鳥の卵は食べるときがあるそうですが。

 

 

ヒキガエルを捕食するヤマカガシ

ヤマカガシの食事の大きな特徴は、毒を持つヒキガエルを積極的に捕食することです。他の蛇はヒキガエルを避けることが多いのですが、ヤマカガシは捕食したヒキガエルの毒を自分の体に取り込んで、自分の体の中にため込むことで毒を再利用しています。またヤマカガシはその毒とは別に上顎の奥歯に毒牙を持っており、これは獲物を動けなくして捕らえるためのタンパク毒です(毒について詳しくは後述)。

あと普通のヘビは獲物を頭から食べることが多いのですが、ヤマカガシは何故か獲物をお尻から食べることが多いようです。確かな理由はあきらかになっていません。食べられているカエルには気の毒ですがヤマカガシがカエルを飲み込んでいる途中の状態は、全く新しい生物みたいに見えて、見ため的にはちょっと面白いことになっています。

 

逆にヤマカガシにとって天敵になるのは、人間、猛禽類、イタチ、テン、タヌキ、大型のヘビなどです。特に生息域が重なるシマヘビやアオダイショウなどの大型ヘビはヤマカガシにとっては脅威で、大型ヘビが多い地域ではヤマカガシは少ないと言われています。




4.ヤマカガシの生活サイクルと繁殖

ヤマカガシ

ヤマカガシは日中に活発に動き、夜間はあまり積極的には動きません。冬になると土の中や石の下などで冬眠をし、自然界では約5年ほど生きると言われています。

ヤマカガシは卵生で、繁殖期は冬眠前の10月から11月です。この時期に交尾をしますが、交尾できなかった個体は冬眠後の4月から5月に交尾することもあります。妊娠したメスは夏に10個前後の卵を産みます。産卵場所は石や落ち葉などの下で、卵は30日から50日ほどで孵化します。孵化した幼蛇は20センチほどの長さで、3年ほどで1メートルほどまで成長します。幼蛇は成蛇よりも鮮やかな色をしています。

 

5.ヤマカガシの毒

ヤマカガシの牙

ヤマカガシは日本で唯一、2種類の毒を持つヘビです。一つは奥歯にある毒牙で、もう一つは首の後ろにある毒腺です。

 

まず毒牙ですが、ヤマカガシの毒牙は一般的な毒蛇と違って口の奥のほうにあります。そのため、人間に噛み付いてもよほど深く嚙みつかない限りは毒を注入することは難しいです。しかし、指や耳など細い部分に噛まれると、毒が入ってしまう可能性があります。ヤマカガシは長らくその毒の存在が知られていなかったのですが、1972年に中学生がヤマカガシに噛まれて死亡した事件がきっかけで、毒牙の存在が広く知られるようになりました。その後も、重症化や死亡する例が何件も報告されています。

ヤマカガシの毒牙の毒はタンパク毒で、日本のヘビの中では最も強力です。マムシの3倍もの毒性を持ちます。しかし、咬傷部は腫れたり痛んだりすることはほとんどありません。そのため、噛まれたことに気づかないこともあります。しかし、体内に入った毒は血小板を破壊して出血を引き起こします。皮下出血や歯茎出血だけでなく、内臓出血や腎機能障害なども起こります。最悪の場合は死に至ります。

ヤマカガシの毒に対する血清はあまり普及していません。群馬県にある研究施設にしかないため遠方地域だと咬まれてから血清投与までに時間がかかってしまうことがあります。そのため、輸血や透析などの対症療法を行うことが多いですが、それらは血清ほど効果的ではありません。

 

もう一つの毒腺は首の後ろにあります。この部分は体色が鮮やかで目立ちます。これは自分が危険な生き物であることを敵に知らせるためのサインとなっていて自然界ではよく見られる戦略です。ヤマカガシはこの部分を平たく広げて敵にこの背中部分を見せるようにします。これは他のヘビには見られない異なる特徴的な行動です。

この首の後ろから分泌される毒は、なんとヤマカガシが食べた生き物から生成されます。日本であれば毒腺を持つヒキガエルが利用されていて、中国にいるヤマカガシの仲間にはホタルを食べて毒を生成するものもいるんだとか。毒腺からは液体状の毒を飛ばすことができます。肌に触れても問題ありませんが、目に入ると一大事。結膜炎や角膜混濁などの目の障害を引き起こし、最悪の場合は失明する恐れもあります。

イタチなどがヤマカガシを狙うときに誤ってこの毒腺部分に噛み付いてしまい、返り討ちにあって死んでしまうケースもあるそうで。ヘビにケンカを売ってしまいそうなペットをヤマカガシがいる環境に連れて行くときは注意が必要かも。

 

6.ヤマカガシに咬まれないために

ヤマカガシ

ここまでヤマカガシの毒の恐ろしさについて説明してきましたが、執拗に恐れすぎる必要は全くありません。この50年でヤマカガシによる死亡事故は5件程度。交通事故で死ぬ確率のほうがよっぽど高いぐらいです。

ヤマカガシは臆病な性格をしていて人間を見つけるとすぐに逃げていくこと、危険が迫っても積極的に咬みついてこないこと、咬まれてもそのほとんどのケースで毒牙が皮下にまで届くことがないこと、これらを考えるとヤマカガシの危険性というのは非常に低いといえます。

ただし、絶対に最悪の事故が起こらないとは限りません。それを避けるためのちょっとした心構えだけここで記述しておきます。

 

①ヤマカガシがいそうな場所では警戒心を持つ

ヤマカガシ

前述したとおり、ヤマカガシは水場を好みます。田んぼや川岸、湿地帯などではヤマカガシに出会う可能性が高くなります。そういう場所では足元や周囲をよく見て歩きましょう。草むらや岩陰などに手を入れたりしないようにしましょう。もしヤマカガシを見つけたら静かに距離を取りましょう。無理に近づいたり触ったりしないようにしましょう。

これらの注意点は他の毒蛇(マムシやハブなど)にも当てはまります。毒蛇との遭遇を避けるためには、「そこに毒蛇がいるかもしれない」という意識を持つことが大事です。

②ヤマカガシで遊ばない

ヤマカガシ

ヤマカガシは臆病で温和なヘビです。田舎の方だと子供の頃に普通に素手でヤマカガシを掴んで遊んでいた人も多かったかもしれません。しかし興味本位でちょっと捕まえてみようなんて思わないでください。

興味本位でヤマカガシを捕まえようとしたり、からかったりしたりすると、咬まれるリスクが高くなります。また、咬まれた場合の被害も大きくなります。実際にこれまでに亡くなった人の多くは、興味心や遊び心で自分からヤマカガシに触れにいった人が大半です。

ヤマカガシはペットでもおもちゃでもありません。遊び心で自分の命を危険に晒すのはやめましょう(涙)

③ヤマカガシに咬まれてしまったら

ヤマカガシ

もし不幸にもヤマカガシに咬まれてしまったら、まずは落ち着いて行動しましょう。パニックになると判断力が低下し、毒の拡散を早めることになります。冷静になることが最優先です。

 

まずは咬まれたヘビの種類を確認しましょう。ヤマカガシかどうかは、体色や模様、頭の形などで判断できます。余裕があれば携帯で写真が撮れればベスト。もしヤマカガシであることが確実なら、医療機関に罹ったときのその後の処置がスムーズになります。

 

咬まれたことを認識して最初に迷うのは『毒が注入されたかどうか』の判断。仮に毒が注入されていたとしても、ヤマカガシの毒は自覚症状が出るまでには時間がかかります。しかし自覚症状が出てから処置をしたのでは、最終的に重症化する危険性が高まってしまいます。『咬まれたけど平気そうだ』なんて考えずに、毒が入ってしまった前提で行動するべきです。

次に毒を吸引できるのであれば除去を試みましょう。ポイズンリムーバーなどの吸引器があればそれを使いますが、普通にそれを持ち歩いているケースの方が少ないでしょう。ないようであれば流水で洗って血を絞り出します。口で吸い出すことはおすすめできません。口の中に何かしら疾患がある場合、毒を吸引することで二次被害を受ける可能性があります。また、咬まれた部位から心臓に近い方向にタオルなどで緩く縛ります。これは毒の拡散を遅らせるためです。ただし、血流を完全に止めてしまうと逆効果になるので注意してください。

そして病院へ向かってください。おそらく毒を受けていないと思ってもとにかく病院へ。マムシの毒もそうですが、処方が早ければ早いほど命の危険性を大きく下げることができます。自覚症状が現れてから初めて病院に行こうと判断するのはリスクが大きすぎます。

 

もし不幸にもヤマカガシの毒の症状がはっきり現れてしまった場合は、医者に相談の上でジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所)に連絡してください。ヤマカガシの血清を常備している施設は日本でここだけです。必要とあらばヤマカガシの血清を輸送してくれます。
→ジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所)HP

 

とりあえず、ヤマカガシの毒は危険ですが咬まれたから絶対死んでしまうといったものではありません。焦らず、手早く対応していくことが何より大事なので、冷静に対処するようにしましょう。




7.ヤマカガシの動画

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8.ヤマカガシまとめ

はい、ヤマカガシの生態と対策まとめでございました。

まぁー、対策ってっても「近づくな」「触るな」ってことに尽きるんだけどね(苦)

 

イマドキは自らヘビを手で触りに行くような子供は珍しいのでそういった事故は起こりにくいとは思うけど、万一のときのため、ヤマカガシってのはこういうヘビなんだっていう備えになってくれれば幸いです。

あ、毎回書いてる注釈ですが、このページで書いてる内容はWebや書物などから集めた情報を総合して信頼おけると自分が判断した情報をまとめてます。もしかしたら誤ってる情報が混ざっている可能性もゼロではないですが、ご容赦を。そういったものは判明次第、また加筆修正していきます。

 

さーて、次は何について書こうかなー。

したらな!

 


参考Web:
Wikipedia ヤマカガシ
山川自然研究所

 

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