「育業」という呼び方への違和感
【発表】“育休”新愛称は「育業」、小池都知事「胸を張って言えるように」 https://t.co/2wzqqoBpuS
小池都知事は「育休は決して休みではない」「育児をすることによっていろいろな学びがある。社会で支えていきたい」とコメント。新愛称の応募は約8800件が集まったという。 pic.twitter.com/6twZZsZAEp
— ライブドアニュース (@livedoornews) June 29, 2022
最近あんまり都知事の存在感がないなぁと思ってたら、こういうのをがんばってたみたいです。
もうこの人フリップ芸が板についてサマになり過ぎてるよね。
良いのやら悪いのやら(笑)
うん、育休に対して「育業」という愛称をつけました、だってさ。
これからこの愛称を使って啓蒙活動をしていくらしい。
小池都知事は「育休は決して『休み』ではない」と断言。そのうえで、「育児は未来を担う子供を育てる、大切で尊い仕事。『業』には仕事という意味のほかに、『努力して成し遂げる』という意味もある。まさに『育業』と呼ぶのにふさわしい」とコメントした。
いやまぁ、言ってることは間違ってないし、もちろん育児がしやすい世の中を作るため、そのために育休が取りやすい世の中を作るためにやってることだから、それはそれで全然いいんだけどね。
でも、なーんか違和感がぬぐえなくて。
どっちかというと、個人的にちょっと嫌な気持ちさえしていて。
なんなんだろなーコレって。
どうしてそういう感情になるんだろうと諸々考えてみたら、納得いく答えにたどり着いたので、ちょろっと書いてみる。
呼び名を仕事っぽくすればいいって思考が、そもそもズレている
育休を育業と呼ぶこと。
これによって育休に仕事のような重要性が感じられるようになるってことなんだけど。
育休だって仕事に値するものである、だから育休も重要なのだと。
でもさー、
それってそんな風に思ってる時点で、普段から仕事を上に、育児を下に見ていることに他ならないよね?
だってそうでしょ?
「業」っていう仕事っぽいラベリングをすればその地位が高まるだろうって、それ仕事が上だとはっきり思ってるからそういう思考になっちゃうんでしょうよ。
俺も仕事はめっちゃ大事にしてるけど、それでも育児のほうが大事にすべきだと思っているし、そもそも育児は息を吸って寝て飯食ってうんこして風呂入って寝るのと同じぐらいに当たり前の日常の一部だと思ってる。
そういう考えでいる身としては「育児を仕事的に見ようぜ!」的なムーブメントは全然ピンと来ないし、逆に育児を仕事と同じグループに入れてくれんな、とちょっと苛立ちすら感じる。
今回感じた違和感の正体はコレだった。
都は育児を仕事扱いすることで地位を高めようとしてるけどさ、
元々育児のほうが当たり前に上だと思ってる人間としては、育児を仕事扱いされるのはむしろ育児の地位を下げられてる感じがする。
ねぇ、俺が我が子と過ごしてる時間を労働みたいに言うのやめてくんない?
「業」を営むというのはそれでお金をいただくプロのことなので、保育士さんやシッターさんが担う仕事では。
子どもや家族を大切にしたいと考える社会をつくるのに、「業」をつけないとできないのかね。
育児休業の愛称「育業」に 「名前だけでは変わらない」4割超が期待せず https://t.co/gA48XAqMKb— 三浦瑠麗 Lully MIURA (@lullymiura) June 29, 2022
三浦氏の意見に同意。
仕事のように扱って「業」なんて称号つけないと重要視できないって感覚がそもそもズレてる。
仕事は仕事、育児は育児でまったく別物。
どっちも当たり前に別物として大事。
仮に育児<仕事の思考から抜け出せなかったにしても、仕事側にグルーピングしとけば大事っぽくなるって考え方は、率直に気持ち悪い。
まずは「休」の地位を上げることが重要なんでない?
育児の地位を上げることは大事なことだし、育休の地位を上げることも大事なことなんだけど。
そもそもね、育休が下に見られる理由って「休」に対するマイナスイメージによる部分が大きいと思うんだよね。
「勤勉」「努力」って言葉が死ぬほど好きな日本人。
そのせいで休むということに妙に嫌悪感を持つ傾向があります。
日本人の労働時間って一昔前に比べりゃ改善傾向だけど、それでも休むことに対しての風当たりの強さは相変わらず残っているところが多くて。
休暇を取らない(取れない)理由のメインは「周りに気を遣って」がトップだそうな。
それもあってか、いまだに有給休暇の消化率平均って60%に届かない。
せっかくの給料が発生する休暇という労働者の権利を、20日付与されたらそのうち8日以上をドブに捨ててるってこと。
すげぇもったいないし、お互いの監視の目のせいでそうなってるのはかなり理不尽だよね。
だから、もうちょっと「休」が当たり前になる必要がある。
そう考えると、世間において「育休」の地位が低くてその原因が「休」に対するマイナスイメージがあるのなら、「休」という字を伏せることを頑張るんじゃなくて、「休」自体の地位を上げることを頑張るのが正しい在り方じゃない?って思うんだけどね。
この考え方、なんかおかしいかな?
そもそも育休が育業になるとややこしい(笑)
そもそも育休って言葉がね、会社側からの視点での言葉なわけで。
有給休暇、夏季休暇、冬期休暇、慶弔休暇、産前・産後休業、育児休業、介護休業、etc。
どれも「〇〇の理由で会社を休みます」って意味合いで使われる言葉。
だから「休」という字で合ってるし、「業」にしちゃうと会社視点じゃなくて自分視点になって言葉がおかしくなる。
さらにそもそもだけど、育休だけ育業にしちゃうとワケわかんなくなっちゃうでしょ。
育休と同じく産休も今回大事にされるべきもののひとつだろうに、産休が産業になったらもうカオス過ぎるし(笑)
介護休業なんて、もう介護業になっちゃって、プロになっちゃうじゃん(笑)
「育業」を啓蒙活動の中で使う愛称みたいなこと言ってるけど、世間にどこまで浸透させるつもりなんだろうか?
お祭りイベントの中で嬉しそうに連呼してるだけで終わるなら効果として意味ないし、でも一般企業の中にまで浸透させるつもりなら日本語として意味合いがおかしい問題は解消する必要がある。
都はいったいどういう着地で考えてんの?
とまぁ、こんな理由で俺は「育業」って呼び方に微妙な思いです(笑)
外ヅラを仕事っぽく飾り付けることで地位を上げようとするのは、かえって仕事のほうが地位が高いと明言するようなもの。
「休」っていう字を排除することは、かえって休むことがマイナスであると明言するようなもの。
結果的に仕事の地位をより強固なほうにバイアスかけにいってどうすんの(笑)
やるべきことはそれじゃないよねー。
今回の育業を愛称にしましょうってニュース。
現時点でもそれなりに否定的な意見はあるみたいだけどね。
「育児を仕事っぽくして重みが出たね!」って反応より、「育児を仕事程度と一緒にすんじゃねぇ!」的な反応のほうが多く出る世の中のほうが俺は好きかなー。
(もちろん仕事も大事です)
みなさんはどうお考えでしょ?
したらな!
コメント