【危険生物】イモガイの生態と対策

イモガイ

画像引用元:YouTube イモガイの静かなる捕食 | ナショジオ

 

イモガイッ!

 

はい、演劇人が生き物を語るシリーズ。

なんでこんなことやってるんだろうと自問自答もなくはないけど、まぁ、自分のブログなんて自分が好きなもん書くもんだと開き直って筆を取ります。

いや、イモガイのことを好きかって言われると何かアレだけど。

じゃあなんで書くんだイモガイ!(汗)

 

 

ってなわけで、今回は海の危険な生き物『イモガイ』の回です。

 

 

知名度はそんなでもないけど、たまーにテレビの危険生物特集とかに有毒な巻貝として紹介されたりして、その驚異的な捕食方法でTwitterのタイムラインを一瞬沸かせるニクいやつ。

 

さぁ、はりきってドーゾ!

 

 

1.イモガイとは?

イモガイ

画像引用元:YouTube Cone Snail Eating Fish

イモガイは、見た目と名前のとおり貝の仲間です。イモガイ科の中のイモガイ亜科に属する貝類の総称で、その種類は900を超えるとされています。日本だけでも約120種類のイモガイの仲間がいるそうな。

イモガイと言う名前の由来は「芋貝」、つまり芋に似ているから。貝殻をぱっとみたときにその姿が里芋に似ているため、そこからそう呼ばれるようになったようです。

 

 

 

そのせいなのか、イモガイの仲間の名前をWikipediaでざーっと見てみると、

 

 

 

イモの名前ばっかりや(´・д・`)

 

 

あくまで「イモに似てる貝」なだけなのに、なんとかイモ、なんとかイモって。

もはやそれはイモである。

 

 

みんなちゃんと貝って呼んであげて。。。

 

 

 

 

しかし、ヤキイモは流石にひどいと思う。

 

 

 

あ、ちなみにネーミングに関しては、他には貝殻の大きさに対して殻口が狭くて身が隠れて取りづらいことからミナシガイと呼ぶ人もいます。沖縄ではその毒性からハブガイ、また毒を受けたら病院にたどりつく前に浜で絶命してしまうということでハマナカーとも。これクラスの浜中君がいじられそう(笑)

海外ではシガレットスネイル(葉巻貝)と呼ばれることもあるそう。これは毒を受けた人が葉巻を吸う間に絶命してしまうことからついたネーミング。こ、これがハリウッド式のウィットに富んだ会話ってやつか・・・!

 

2.イモガイの身体的特徴

イモガイのサイズ感と貝殻の形状

イモガイ

画像引用元:YouTube イモガイの静かなる捕食 | ナショジオ

イモガイは種類にもよりますが、大きさはおおよそ8~20cm程度です。貝殻の形は里芋に似てるとはいいますが、実際は分銅を横にしたような円錐型の形状。他の貝に比べると螺塔がほとんどありません。

イモガイとよく似た貝ではマガキガイというのがいます。このマガキガイは温暖な海での潮干狩りなどで獲ることができて大変美味しいと人気があるのですが、イモガイと間違えやすく、それに気付かずに不用意に触ることで起きてしまう事故も報告されています。

またこれはイモガイに限ったことではありませんが、貝殻の色や模様は様々で非常に個性的です。色は全体的には白地に対して黄色や茶色の模様がついているものが多い印象ですが、模様の形は縞々だったり、三角や視覚のような幾何学模様だったり、かなり幅広いですね。

 

イモガイの吻(ふん)

イモガイ

画像引用元:YouTube イモガイの静かなる捕食 | ナショジオ

イモガイは貝類の中でも吻がかなり長い方で、自分の貝殻の大きさと同じぐらいまで外部に伸ばすことができます。これにより距離的にも角度的にも広い範囲で周囲の様子を探ることが可能です。

イモガイが有名な理由は、この吻の中に内蔵された毒銛にあります。

イモガイは長い吻を獲物に近づけると、そこから勢いよく水中銃のように毒銛を発射します。この毒銛は歯舌が発達して高質化したもので、中は管のように空洞になっていて、刺した相手に強力な毒を送り込むことができます。この毒は非常に強力で小魚であれば瞬時に絶命するほどです。

毒銛の先端には返しがついていて、イモガイは動かなくなった獲物を毒銛を戻して自分の吻のなかへ丸ごと引きずり込んで食べてしまいます。この毒銛発射からの丸呑みという捕食方法があまりにもインパクトがあり過ぎて、テレビなどで紹介された際にはSNSで軽く話題になるワケです。

イモガイの毒銛

イモガイの捕食シーン

画像引用元:YouTube イモガイの静かなる捕食 | ナショジオ

 

3.イモガイの生息域と生活スタイル

イモガイ

画像引用元:YouTube アンボイナ捕食シーン

イモガイは温かい海を好み、サンゴ礁などがある熱帯・亜熱帯の海に主に分布しています。日本では緯度が低い沖縄県や鹿児島県、さらに暖流が通る高知県・和歌山県・千葉県・石川県などでもみられます。

生息範囲は沿岸部から深海まで広範囲に及び、岩、砂、サンゴ礁など海底の基質を問わずどこにでも姿を現わします。また人間の目に触れやすい潮が引いた後の岩場や砂浜でも見かけられるため、そのことがイモガイによる人間への事故が多い原因となっています。

基本的にイモガイは夜行性です。活動が活発になるのは暗くなった夜の時間帯。そのため普段は岩場に隠れたり、砂の中に潜ったりしてることが多いです。移動速度は極めて遅く、カタツムリが地面を這うようにゆっくりとしか進むことができません。

 

4.イモガイの寿命と繁殖

イモガイ

画像引用元:YouTube Geographus cone shell net feeding on sleeping fish

イモガイの寿命についての言及はいろんな媒体を見渡してもほぼ情報がなく、正確なところは分かりません。ただ見た目がそっくりのマガキガイでも3年、ほかの同サイズの貝類も5年前後なので、おそらくイモガイもそれぐらいの寿命になるのではないかと思います。飼育下では最低でも4年以上生きている記録があります。

イモガイは岩のような固く安定した場所に卵嚢を複数産みつけます。これは長い日数をかけて行われ、2週間で100近い卵嚢を産みつけるときもあるようです。この卵嚢には数千単位の卵が格納されており、孵化するのにかかるのは3種間程度。これらはほかの貝類と同じくベリジャー幼生期を経て成体へと成長していきます。

貝類は雌雄異体(オスとメスがある)と雌雄同体のものがいます。情報が少なくて断言はできませんが、こちらで飼育された方の記録を見る限りでは雌雄異体の可能性が高そうです。

参考:串本海中公園マリンパビリオン資料

 

5.イモガイの食事

イモガイの捕食

画像引用元:YouTube Geographus cone shell net feeding on sleeping fish

イモガイはいろんな種類がいますが、それぞれ食性には大きな差があります。ひとつは海底にすむゴカイなど好んで食べる虫食性、さらに貝類を好んで食べる貝食性、そして魚を好んで食べる魚食性に分類されます。

どの獲物を狙うかによってその毒性の強さが違っていて、虫食性や貝食性のイモガイは毒はそれほど強くありません。ただし魚食性のイモガイの毒は非常に強く、イモガイの中でも最強の毒を持つと考えられるアンボイナガイの場合は大人の人間であっても命に関わるほどの危険があります。

虫食性や貝食性のイモガイは吻を伸ばしながら自ら歩き回って獲物を探しますが、魚食性のイモガイは獲物を岩陰や土の下に隠れて待ち伏せして獲物を待つのが基本スタイル。ターゲットの不意を突いて毒針で攻撃し、動けなくなった魚をずりずりと引っ張ってそのまま丸呑みしてしまいます。

自分と同じぐらいの大きさの魚でさえも丸呑みにしてしまうから驚きですね。口(吻)を大きく広げて、まるで獲物を自らの体の一部にするかのように体内に運び入れていく様子はエイリアン的で鳥肌が立ちます(汗)

↑毒銛を使わずに、吻を大きな袋のようにして包み込む捕食方法をとるケースも。

画像引用元:YouTube アンボイナ捕食シーン

 

6.イモガイの天敵

イモガイの天敵

捕食方法が強烈なので一見して敵はいなそうですが、カニなどの甲殻類がイモガイの天敵となります。カニの固い甲羅に対してはさすがの毒銛も無力なようで。成す術もなく強力なハサミで身をほじくり返されて食べられてしまいます。

またイセエビのような大型のエビも強力な大顎で殻ごと破壊して食べてしまうため、イモガイにとっては天敵になります。

また貝食性のイモガイがいることから、イモガイを捕食するのがイモガイということも普通あるようです。貝食性のイモガイ同士がぶつかった場合って、スナイパー的な毒銛の撃ち合いになるんでしょうか(笑)ちょっとそのバトルを見てみたい気もします。




7.イモガイの人間に対しての危険性

イモガイの吻

画像引用元:YouTube Cone Snail Eats Fish

イモガイの毒は神経毒。毒を持つ生き物の中には普段の食事からその成分を集めて毒を生成するものが多いですが、イモガイは自分の体内で一から毒の成分を作り出します。その毒は神経毒で、構成される成分は数百種類に及びます。さらにイモガイの種類によってその成分の内訳もまったく変わってくることがイモガイの血清が作れない理由にもなります。

前述したとおり強力な毒を持つのは魚食性のイモガイで、最も毒のレベルが高いのはアンボイナガイとされています。10センチ程度のその小さな体内に人間30人を死に至らしめる量の毒を保持していると言われていますので、もうとんでもない貝ですね。。。

 

人間にとって厄介なのは、イモガイの毒銛自体は非常に細く小さいため手袋やウェットスーツを貫通することがあること、さらに神経毒であるために刺された痛みを感じにくいことが挙げられます

しかししばらくすると急激に患部のはれや激痛が起き、発熱、めまい、嘔吐、倦怠感、喉の渇きから、最悪全身まひや呼吸困難に陥り死に至ることもあります。病院に行く前に浜の中で死んでしまうからハマナカーって、過去に相当の数の事例があったからそう呼ばれるようになったと考えると恐ろしいですね。

 

1996年までにイモガイに刺される事故は報告されているだけで30件程度。そのうち8人(うち7人は未成年)が命を落としていて、この死亡例はすべてアンボイナガイと推測されています。

ただし、これはあくまで報告されて表に出ている数字であって、実際には未報告の事例や、イモガイの仕業だと認識されていない水難事故も多数あると考えられます。単独でダイビングして溺死しても、それが本当に溺死なのか、イモガイによる刺傷が原因なのか、それは溺れた本人にさえも分からないケースが多いでしょう。

 

隠れているイモガイ

画像引用元:YouTube Striatus Cone Shell spearing fish with venomous harpoon

 

イモガイに刺されて命を取り留めた男性の事例:

1996年5月に沖縄県糸満市でシュノーケリングと潮干狩りをしていた38歳の男性(身長170cm、体重70kg)が、アンボイナガイをマガキガイと誤認識して捕獲(そもそもイモガイのことを知らなかった)。それまでに捕獲していた貝類と同じ袋の中に入れてシュノーケリングを続けた。

しばらくして左手を刺され、そのわずか痛みに気がつき患部を見るとイモガイの毒銛が折れて刺さったままになっていた。毒銛を抜いて患部を数回絞りながら、念のために口で毒を数回吸い出し、そのままシュノーケリングを続けた。

30分ほどして体に眩暈、複視、倦怠感の症状が現れたため岸に戻るが、途中で真っすぐ歩くこともままならないほど症状が悪化。偶然居合わせた別の潮干狩り客に助けを求めて、刺されてから2時間後に病院に到着。

視覚障害、味覚障害、呼吸障害の症状がみられた。刺傷部分を切開して毒を除去した後に酸素投与しICU入り。処置がされてからは各症状のヤマは超えて徐々に回復傾向になり、翌日は全身の感覚に違和感は残るものの食事をしたり歩行をしたりできるように。入院5日目には酸素投与終了、6日目に後遺症なしで退院した。

 

イモガイの被害に遭わないために

イモガイ

画像引用元:YouTube Striatus Cone Shell spearing fish with venomous harpoon

イモガイは温暖な海であればどこにでも住んでいるため、人間との遭遇の可能性は非常に高いです。そんなときにイモガイの存在を知っているかどうかが命の分かれ道になるかもです。

『岩場で遊ぶ際には危険な生き物がいる』 という情報共有がまず大事な一歩。特に未成年のほうが致死例が多いので、小さなお子さんを持つ家庭では海岸沿いで遊ばせる際には必ずイモガイの説明を事前にしておくようにしましょう。

イモガイは本来、日本でも南のほうの暖かい海に生息する生き物ですが、近年の温暖化で熱帯の生き物はどんどん高緯度の地域でもみかけられるようになってきました。房総半島や三浦半島などでも見つかっている以上、それより西側の地域ではどこでもイモガイと遭遇する機会がありえると言えます。

 

とにかくこの形状の巻貝を見たら、まず近寄らないこと、そして触らないことです。

 

イモガイはかなり吻が伸びるので貝部分を持ってる指にも毒針が届きます。また、イモガイはミナシガイと言われるように奥深くまで身が隠れていることもあるので、一見空っぽの貝殻に見えたとしても実は中でしっかり生きていることもあります。

またマガキガイのような似た形をした無毒の貝もいますが、素人が波打つ水の中でそれを見分けるのは難しいです(一応マガキガイは貝殻の出入口近くに切れ目があって、そこからニョロリと目を出す)。

 

万一、イモガイに刺されてしまったら

イモガイの毒銛(毒針)

画像引用元:YouTube Killer Cone Snails | National Geographic

イモガイの毒銛には返しもついているので痛そうなイメージがありますが、実際には刺されたときには小さな痛みしかなく、そもそも刺された自覚がないことも多いようです。

症状としては、まずは刺された箇所が小さく赤く腫れて徐々に痛みが増していき、眩暈、倦怠感、頭痛、発熱、吐き気などの症状が出ます。そしてそれがひどくなっていくと歩行が困難になり、呼吸も困難になっていきます。

 

何かに刺された感触、もしくはそういった身体異常の兆候を少しでも感じたら、とにかくすぐに陸に上がってください。そのまま海中にいると溺れてしまう危険性が高まります。これはイモガイに限らずどの毒性の生き物に咬まれた場合でも共通ルールです。

もし刺された箇所が分かっているならば、毒を口や吸引器で少しでも吸い出しておくと後の症状に差が出る可能性があります(ただし口の中に傷がある場合は厳禁)。その箇所から心臓に近い位置をタオルなどで縛り、安静にしつつ病院に向かってください。

 

病院にもイモガイの毒に対する血清は存在しません。そのため対処療法をしながら人間自身の治癒力と代謝によって毒が薄まっていくのを待つしかありません。

イモガイの毒で死に至るケースは呼吸不全で、幸い心筋や中枢神経に何か作用を起こすことはないようです。そのため酸素投与によってそのリスクさえ回避できる状況になれば死に至ることはないとされています。刺されてから数時間がヤマで、それさえ乗り越えれば時間の経過とともに徐々に回復に向かっていきます。

 

8.イモガイの貝殻はキレイで人気がある

イモガイ

貝殻の模様は種類や個体によって様々で、中には非常に鮮やかなものも多いのでイモガイの貝殻は一部界隈ではけっこうな人気があったりします。メルカリのようなフリマサイトを見てみると「ハンドメイドアクセサリーにいかがですか」的な感じでけっこう出品されてます。

ただし、このメルカリでの出品はぶっちゃけ言ってグレーゾーンで、最悪アウト判定となる可能性があります。自治体によっては砂浜のものを採取して持ち帰ることを禁止しているところが多くあります。

子供のためにひとつふたつ持ち帰るようなレベルであれば黙認されることもあるようですが、販売目的で貝殻を大量採取みたいなのは罪に問われる可能性があるのでご注意を。実際にサンゴのかけらを持ち帰って10万円の罰金刑となった事例もあります。

 

9.イモガイって食べれるの?

いちおう普通に食べれることは食べれるようですが、捕獲する際に危険がある、身が引っ込んでしまうので食べるのに手間がかかる、可食部分が少ない、などの点からまったく人気がない模様。YouTubeの素潜り漁師マサルさんが茹でて食べておりますが、一緒に食べているマガキガイやクモガイと比較しても一番美味しいとおっしゃっています。ただし、当然ながらイモガイ捕獲の際には危険が伴うので絶対に真似しないようにしてくださいね。




10.イモガイの動画

動画1.イモガイの静かなる捕食 | ナショジオ

動画2.Killer Cone Snails

動画3.アンボイナ捕食シーン

動画4.Geographus cone shell net feeding on sleeping fish

動画5.Cone Snail Eats Fish

動画6.Conus monachus

動画7.Striatus Cone Shell spearing fish with venomous harpoon

動画8.Cone Snail Eating Fish




11.イモガイまとめ

以上、イモガイの生態と、その危険に遭わないための対策でございました。

 

かなりデンジャーで、かなりエイリアンチックでインパクトのある生き物だけど、そういうのに魅力を感じちゃうのは人間の性(さが)なのかもしれないですな。

実際に海辺では遭遇したくはないけれども。

 

あ、コレ毎回書いてますが、この記事については私自身の判断でWebやいろんな書籍から信頼に値すると思える情報をチョイスして書いております。もしかしたら後々に誤情報と発覚するような内容も含まれているかもしれませんが、どうか温かい目でご容赦くださいません(たぶんそれほど見当違いにズレた情報はないとは思うんだけど、いちおう)。

 

以上、なぜか演劇人が語るイモガイの生態でした。

ビバ☆イモガイ。

 


参考Web
Wikipedia イモガイ
Wikipedia アンボイナガイ
Wikipedia Cone snail
なきじん海辺の自然学校 ハブ貝 殺人貝の異名もある超猛毒の貝 海のスナイパー
アウトドア趣味に関する総合情報サイト イモガイ 猛毒を持つ海の殺し屋(殺人巻貝・イモガイの図鑑)
grape イモガイとはどんな生き物? 猛毒を持ち、刺された人の体験談にゾッとする

 

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