【サメ】ウバザメの生態

口を多く開いたウバザメ

画像引用:YouTube 『Breaching Basking Sharks | World’s Weirdest』

 

サメ好き演劇人が解説するサメの生態シリーズ!

ちょっと久しぶりの今回はウバザメです。

 

 

世界で二番目に大きい魚なのにいまいち知名度が低い大型のサメ。

昔とある議員が「二位じゃダメなんですか」なんて言ってたけどね、よく考えてみりゃ日本で二番目に高い山とか、二番目に大きい湖とか、ぱっと答えられる人なんて少ないもんねぇ。

やっぱ一位と二位って扱いに雲泥の差があるなぁとウバザメで実感するところ(笑)

 

 

さぁ、今回はウバザメの生態の解説です。

はりきってどーぞ!

 

 

1.ウバザメとは

ウバザメ

ウバザメは、ネズミザメ目ウバザメ科に属する唯一のサメです。世界一大きな魚としてジンベエザメが有名ですが、このウバザメはそれに次いで第二位の体長を誇ります。一般的な知名度こそ低いですが、そのサイズ感と大きな口が特徴の独特なフォルムは魚類全体の中でも際立っていて、とても魅力的な生き物の一種であると言えるでしょう。

『ウバザメ』という名前の由来は、長い鰓がまるで姥のシワのように見えることからきています。英名は『Basking Shark(バスキング・シャーク)』で、日向ぼっこをしているように漂っているその姿が由来。老婆にしろ日向ぼっこにしろ、どちらもゆったりした緩慢な言葉が由来になっているのがおもしろいですね。

また日本の漁師たちの一部では『バカザメ』と呼ばれることも。これは海面近くでゆったりと食事をしているところを捕獲するのが非常に簡単で、頭が悪いという意味でそう呼んでいるようです。実際に体に対しての脳みその割合もかなり低いそうで。。。

 

2.ウバザメの身体的な特徴

ウバザメのサイズ感

ウバザメのシルエット

画像引用:YouTube 『Breaching Basking Sharks | World’s Weirdest』

成熟したウバザメのサイズはおおよそ3~8メートル程度と考えられています。前述したとおりウバザメはサメの中でも2位、魚類全体でみても2位という大きさ。正式に確認されている個体では全長12.2メートルが最大のようです。

また非公式では15メートルなんて記録もあるそうですが、信憑性は微妙なところ。これは他のサメでもいえることですが、こういった目撃情報は発見者が興奮状態にあったり、繰り返しの伝聞によって誇張されたりといった形で尾ひれがつくことが多く、信頼に欠ける情報であることが多いです。

ウバザメの特徴的なシルエット

真上から見たウバザメ

画像引用:YouTube『Basking Sharks』

写真でもわかるとおり、ウバザメはほかのサメとは一風変わった体型をしています。天狗のように前面に尖った上あご、体高よりも大きく開くことのできる口、腹から背中まで届きそうなぐらいに長い鰓、小さくつぶらな目など。これらの特徴から他のサメと見分けることは容易です(そもそもサイズ感がほかのサメとは明らかに違いますが)。

船上からその背ビレと魚影だけを見た場合はホホジロザメに見えなくもないようですが、頭部の横幅や長い胸鰭、ゆったりと海面近くを漂うように泳ぐ様子から判別は難しくなさそうです。

体色は黒や濃いめの灰色~暗褐色といった感じで、個体による差はけっこう顕著。お腹のほうはくすんだ白色になっています。

3.ウバザメの歯や顎、その食性

正面から見たウバザメの口の中

画像引用:YouTube 『Breaching Basking Sharks | World’s Weirdest』

ウバザメもジンベエザメと同じくプランクトンフィーダーです。大きな口を開けて海水を吸い込み、鰓の内側に備えられた鰓耙という濾過器官でプランクトンをこしとって捕食しています。
(ちなみに「ウバザメは1時間あたり2000リットルの海水をこしとる」と書かれているWebサイトが多いですが、おそらくは1時間あたり2000トンの間違いかと思います。一般家庭の風呂釜が200リットルぐらいなのに、ウバザメが1時間で風呂釜10杯ぶんしか吸い込まないわけがないですもんね)

驚くのはその口の大きさで、自分の胴体の幅よりも大きく口を開いている姿は圧巻。ビジュアル的には完璧にモンスターそのものです。もしウバザメのことをまったく知らない人がたまたま海面でこれに遭遇したら、パニックになって溺れてしまいそう(笑)

またウバザメには小さく細かい歯が1列あたり100本以上、それが複数列備わってはいます。ただし大口を開けてプランクトンを吸い込みながら食事する様を見る限りは、その歯を使用する機会はほとんどなさそうです。クチャクチャ何かを咀嚼しているウバザメの姿も想像すると面白いですが。

サメは交尾の際にお互いの体を咬んで固定する種が多いので、もしウバザメもそういう習性であれば、歯を最も有効に活用できるのはそのときかもしれません。実際に交尾の際についたと思われる歯型も観測されているとのこと。

 

4.ウバザメの天敵

ウバザメはその体の大きさから天敵は非常に限られます。可能性として考えられるのはシャチや、ホホジロザメやイタチザメといった大型のサメでしょうか。シャチがウバザメを襲撃した例、またホホジロザメがウバザメの死骸を漁っている例は、それぞれ目撃報告があるそうです。

あとは全生物に共通して言えるのは「天敵は人間」ですね。かつては肝臓は油、ひれはスープ、表皮は皮素材、枝肉は魚粉としても活用できるとして積極的に捕獲されている時期がありました(後述しますが今では大半の国の間で保護対象)。

また直接的に命をおびやかす存在ではありませんが、ダルマザメやヤツメウナギのような体表に食いついてくるような種の魚達によって体表に傷をつけられてしまうことは多くあるようです。

ウバザメに寄生するヤツメウナギ
↑ウバザメの体表に喰いつく3匹のヤツメウナギ。左下には過去に喰いつかれたと思われる歯形跡も。

画像引用:YoTube『Basking Sharks | SHARK ACADEMY』

 

5.ウバザメの生息域

ウバザメは基本的には世界中の温帯から寒帯の海に生息しています。稀なケースなのかもしれませんが北は北極海でも目撃例があるんだとか。逆に南はブラジル沖や南アフリカ付近でも観測されています。

ウバザメは回遊性が高く、同じ場所には留まらずいろんな海を行き来していると考えられています。特定個体を衛星観測で追跡した結果だと、77日間で2000km近い距離を移動することも分かりました。

基本的には夏の暖かい時期に沿岸地域にやってきて海面近くで餌を求めて泳ぎ、逆に冬の寒い時期は遠洋の深い海で過ごしているようです。深度900メートル地点での観測例もあり、「日向ぼっこをするサメ」の名を冠しながらも深海ザメ的な一面も持ち合わせています。

単体で行動することが多いサメですが、北ヨーロッパやカリフォルニアでは群れが観察されることも多くあります。1900年代の個体数が多かった時期には数百単位の群れが観測されることもあったそうです。当時のほうが大型の個体が多かったでしょうし、それがとんでもない数で集まっている光景はさぞ圧巻だったでしょうね。

ウバザメの群れ

画像引用:YouTube『Basking Sharks』

 

6.ウバザメの寿命と繁殖活動

ウバザメの寿命について確かなことはわかっていませんが、これまでに観測したウバザメの中で最高齢と思われるものはその椎骨より32歳前後と推定されました。そのため専門家の見識だと寿命は50年前後でないかと言われています。成熟年齢は6~13歳ぐらいとのこと、

ウバザメの交尾については未だ観測事例がありませんが、夏期にプランクトンの餌場に集まることでパートナーを見つけて交尾に至ると考えられています。

ウバザメは卵胎生で妊娠期間は2~3年程度。メスの体内で稚魚たちは長い期間をすごし、その間に未受精卵を食べて栄養を補給しています(ウバザメの細かな歯はもしかしてこのときに活用されているのかも)。

過去に捕獲された妊娠したメスの個体では一度に6尾(うち1尾は死産)出産した記録があります。子供はすでに1.5~2メートル程度まで大きくなった状態で海中に放出されます。

 

7.ウバザメのブリーチング

ブリーチング(ジャンプ)するウバザメ

画像引用:YouTube『Diver Gets Up-Close View of Basking Shark Breach Off Irish Coast』

ゆっくりと泳ぐ巨体からは想像できませんが、ウバザメは勢いよく海面からジャンプして飛び出すことができます。なんとその体が海面から2メートル近く飛び出ることもあるというから驚きです。この行動はブリーチングと呼ばれ、サメの中ではハナザメやアオザメが同様に海面に飛び出すことで知られています。

ブリーチングの目的は未だにはっきりとは解明されていません。繁殖期におけるアピールのための行動だという説、体表についた寄生虫を海面に叩きつけて落とすための行動だという説などが言われています。。確かに体表にダルマザメやヤツメウナギなどが付いた際にそれを振り落とすには、この巨体を海面に叩きつける行為は非常に有効な気がします。

 

8.ウバザメを間近で観察する

ボートに近づくウバザメ

画像引用:YouTube『Basking Sharks』

主食がプランクトンであること、遊泳速度が遅いことから人間に対しての危険性はほぼありません。スコットランドではウバザメを観測できるスポットが多くあり、場所によっては船を出して観測しにいくようなツアーを行っている場所もあります。

またダイバーにとってもジンベエザメと同じく憧れの存在で、ウバザメのスポットとして有名な海では一緒にダイビングできるツアーなども組まれています(ただしサメに刺激を与えない前提で)。人間や船が近づいても積極的に逃げる姿勢を取らないので比較的近い距離で観測できることが多いのも魅力的です。

 

9.ウバザメの保護

ウバザメ群れ

画像引用:YouTube『Mysterious circles of basking sharks explained』

1900年代に比べ、ウバザメのその数は激減したとされています。水産資源としての乱獲や、スポーツフィッシングの標的にされた地域があったり、また漁業の網を破る厄介者として積極的に駆除されてしまったことが主な原因で、昔は日常的に発見されていたウバザメはかなりの希少種になってしまいました。

ウバザメは性成熟するまでに時間がかかり、一度の出産で生まれる個体数も数が限られるため、人為的な原因でその数を減らされてしまうと簡単には回復できないのが現状です。

すでにアメリカやイギリス、ニュージーランド、太平洋全域では保護種に指定されていますが、発展途上国ではその肝臓を狙ってこっそりと捕獲されていることもあったりで、なかなか保護が進んでいない部分もあるようです。

ちなみに日本では1970年ぐらい前までは三重県でウバザメを目的とした漁が行われていましたが、現在では行われていません。日本ではウバザメ捕獲を規制するようなルールは特にありませんが、市場での水産資源としての価値が低いことから、たまに混獲されてもその場でリリースされることが多いようです。

 

10.ウバザメの水族館展示は難しい

ウバザメの長いエラ

画像引用:YouTube 『Breaching Basking Sharks | World’s Weirdest』

現在ウバザメを飼育している水族館はありません。生態的にはジンベエザメに近い部分が多いので飼育できそうな感じもしなくはないのですが。ジンベエザメと違ってウバザメは泳ぎながら受動的に口の中に餌を入れていくスタイルですし、そういった部分が閉鎖空間での飼育難易度を上げているのかもしれません。いけすでの飼育例さえないようですから、水槽に入れて飼育するのが実現するのはまだまだ先の未来になりそうです。

また、ウバザメの展示がコストに見合うかどうかという部分も大きそうですね。水槽を用意するだけでも大変ですし、数トンになるその巨体の運搬コストも膨大、肝心のウバザメもいつ捕獲されるかわからない、飼育しても数日で死んでしまうかもしれない、食事コストも馬鹿にならない、そもそものウバザメの知名度から集客ができるかどうかもわからない、となると水族館的にはリスクが大き過ぎます。

 

11.未確認生物と間違われやすいウバザメの死骸

 

ウバザメは死亡して腐敗すると、背骨以外の部分はボロボロになって朽ち果ててしまいます。この状態の個体はかなりグロテスクでとても魚類には見えないため、よく未確認生物の扱いを受けてきました。1977年にニュージーランドで起きたかの有名なニューネッシー騒ぎもこのウバザメが正体。

たしかに写真だけ見ると既知の生き物とは思えない形をしていますね。首長竜発見みたいな誤解を受けても仕方がないような気もします。ほかにも1808年イギリスや、1970年にマサチューセッツに漂流した謎の生物の死骸も生物学者たちによってウバザメの死骸と断定されています。未確認生物発見へのロマンはなかなかうまくいかないものですね(涙)

 

12.ウバザメまとめ

以上、ウバザメの生態でしたー。

 

人間との付き合いは長いのに繁殖方法などまだまだ不明点が多いという謎の多いサメ。他のサメ含めて解明してない部分が未だに多いのも魅力のひとつなんですけどね。また信頼できる情報が増えていくようであれば追記していきたいと思います。

あ、毎回書いてますが、私自身の判断でWebやいろんな書籍から信頼に値すると思える情報をチョイスして書いております。もしかしたら後々に誤情報と発覚するような内容も含まれているかもしれませんが、どうか温かい目でご容赦くださいません(たぶんそれほど見当違いにズレた情報はないとは思うんだけど、いちおう)。

 

さーて、次はどのサメにしますかね。

したらな!

 


参考Web:
Wikipedia ウバザメ
Wikipedia(英語版) Basking shark
OSPAR Commission Status Assessment 2021 – Basking shark
HEBRIDEAN WHALE AND DOLPHIN TRUST
Basking shark guide: how big they are, what they eat, and why they’re endangered
ScienceDirect Basking Shark
University of Michigan Cetorhinus maximus basking shark

参考書籍:
ほぼ命がけサメ図鑑
サメガイドブック
世界サメ図鑑

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