【サメ】シュモクザメの生態

シュモクザメ
画像引用元:YouTube シュモクザメの謎|ジョナサン・バードのブルーワールド

 

シュモクザメッ!!

 

 

はい、演劇人が送るサメ解説シリーズ。

芝居や演劇論を語らず、なぜかサメを語るという謎のシリーズです。

需要がどこにあるのかわかりませんが、まぁ、そんなことは気にせずどんどん書いていこうと思います。

俺のブログだ、俺が好きにやるぜ!(開き直り)

 

 

さぁ、今回は頭がトンカチの形した変わったサメ、シュモクザメ。

その生態を解説していきたいと思いますっ。

よろしくどーぞ!

 

 

1.シュモクザメとは

シュモクザメ

シュモクザメは、メジロザメ目シュモクザメ科に属するサメの総称です。

英名はHammerhead Shark(ハンマーヘッド・シャーク)。頭がまるでカナヅチのように見えるということでその名前が付けられています。和名のシュモクザメ(撞木鮫)も、頭部が楽器を叩く撞木の形状に似ているところからきています。サメって名前の由来が英名と和名で全然違ったりするのが多いんですが、シュモクザメは珍しくほぼ一致するレアパターン。

 

2.シュモクザメの種類

シュモクザメ

シュモクザメという呼び名はあくまでシュモクザメ科のサメの総称です。「シュモクザメ」っていう名前のサメがいるわけではなく、シュモクザメと呼ばれる1つの分類があって、さらにその中にいろんな種がいる形になります。

現在はインドシュモクザメ、アカシュモクザメ、シロシュモクザメ、ヒラシュモクザメ、ウチワシュモクザメ、ナミシュモクザメなど、合わせて9種類のサメがシュモクザメ科として扱われています。

その中で日本でも観測されるのは3種で、アカシュモクザメ、シロシュモクザメ、ヒラシュモクザメがそれに該当します。それぞれざっくりと特徴を書くと以下のとおりです。

アカシュモクザメ

体長は1.5~4メートル程度。頭部が湾曲していてゴツゴツし、中央部にくぼみがある。名前の由来は肉が赤いところからきているので、外見が赤いわけではない。日本近海では最も個体数が多く、比較的浅めの沿岸で暮らしている。海水浴場近くで目撃されて、そこを遊泳禁止に追いやってしまうケースがよくある。大きな群れを作る習性がある。

シロシュモクザメ

体長は最大で5メートル程度。アカシュモクザメと同じく頭部が大きく湾曲しているが、あまりゴツゴツしていなくて中央のくぼみもない。外見が白いことが名前の由来ではあるが、アカシュモクザメと比べればやや色が薄いなぐらいで特別真っ白というものでもない。外洋性なのであまり人と遭遇することはない。よく定置網などでほかの魚と混獲されるため、漁人にとってはあまり好ましくない存在。

ヒラシュモクザメ

ヒラシュモクザメ画像引用元:YouTube Great Hammerhead Sharks | JONATHAN BIRD’S BLUE WORLD

英名がグレート・ハンマーヘッドってだけあって、体長は最大で6メートル程度。頭部がほとんど湾曲しておらず真っ直ぐに近い。ゴツゴツは控えめで中央のくぼみもあんまりない。第一背びれが非常に長い(高い)鎌形。日本では沿岸での観測例は少なく人と遭遇することは滅多にない。個体数が少ないが、このサイズ感で肉食性のため人間に対する潜在的な危険性はかなり高いと言われる。

 

日本で観測されるシュモクザメはこの3種なので、このページではこの3種で概ね共通すると思われる事項を「シュモクザメの生態」として書いていきたいと思います。その旨ご了承くださいまし。

 

3.シュモクザメの身体的な特徴

独特で特徴的な形をした頭部

シュモクザメ
画像引用元:YouTube シュモクザメの謎|ジョナサン・バードのブルーワールド

シュモクザメを語る上で一番の特徴は、なんといってもそのカナヅチの形をした頭部です。この見た目のせいで他のサメとは見間違えようがありませんね。

なんでこんなヘンテコな頭をしているの?と思ってしまうのが率直なところですが、実はこの頭部には生存競争を勝ち抜くための様々な恩恵が詰まっているのです。

視野が広くなる

シュモクザメの目はカナヅチのような頭部のそれぞれ両端に配置されています。そのため視野角が非常に広がり、広範囲を見渡すことが可能になり獲物を探しやすくなります。ただし鼻先真正面だけは逆に死角になってしまうため、首を振りながら泳ぐことでこの死角をカバーしているようです。

遠近感が正確にわかるようになる

左右の目の位置が離れれば離れるほど違う角度で対象を見ることができるため、遠近感が正確に取れるようになります。これにより的確に獲物を捉えることができると推測されます。

発達したロレンチーニ器官が内蔵されている

サメの鼻先には獲物の微弱電流をキャッチできるロレンチーニ器官が備わっているというのが有名ですが、シュモクザメは特にこの能力がほかの種のサメに比べて非常に優れているとされています。獲物を探すときに海底近くをまるでダウジングをしているかのように頭部を振り回し、砂の中に埋まって隠れているアカエイさえも見つけてしまいます。

発見した獲物を押さえつける

シュモクザメのこの独特の形をした頭部は、捕食時に獲物を抑える武器としての役割も持っています。この平たい頭部で発見したエイを上から押し付け、そこから体を回しながら左右のヒレを咬みちぎり、その遊泳能力を真っ先に奪います。

大体のサメは鼻先がデリケートで、なでられるとネコのようにおとなしくなってしまう種なんかもいますが、シュモクザメは進化の過程で弱点ではなく武器にまで昇華させたというわけですね

頭をウイングにした高速旋回

シュモクザメ
画像引用元:YouTube Hammerhead vs. Stingray

頭部の面積が大きいため、これの角度をコントロールすることで他のサメよりも俊敏に進行方向を変えることができると言われています。これによりエイのような瞬発力の強い魚が逃げ出しても、的確にその姿を追うことができるようです。

広い視野、正確な遠近感、獲物を探すセンサー、獲物を取り押さえる武器、高速ターンを可能にするウイングの役割。一見おかしな進化をしてしまったように見えるその頭部は、実にハンターとして理にかなった進化の結果だといえるかもしれませんね。

実際フロリダでは撒き餌をして魚を集める際に、一番早く寄ってくるのがシュモクザメなんだそうです。視覚、嗅覚、聴覚、ロレンチーニ器官など、総合的に他のサメよりも獲物の探知能力が高いと見ていいでしょう。

 

シュモクザメの顎と歯

シュモクザメ画像引用元:YouTube シュモクザメの謎|ジョナサン・バードのブルーワールド

シュモクザメは大きく広がった頭部に比べて口部分の幅が小さく、口自体も他の肉食性のサメよりも比較的小さくなっています。上顎下顎ともに歯は30本前後。形は正三角形に近く、うっすらとのこぎりのような形状をしています。

上の写真のとおり顎の可動域は見た目の印象よりも大きく、特に獲物を丸飲みにする際にはかなり大きく口を開けることができるようです。

 

 

4.シュモクザメの食性

シュモクザメは自分より小さな生き物であれば何でも食べます。よくいる小魚はもちろん、エビやカニのような甲殻類、タコ、イカなど様々です。また大型の魚についても、釣り人が針にかけてもがいているカジキマグロやターポンを横取りするような事例もあるようなので、ケースバイケースで襲い掛かることはあるようです。

大型になるとイカなどの軟体動物を主に狙うようになる模様。また好物なのはエイで、発達したロレンチーニ器官や頭部での抑え込みを使ってうまくエイを捕食します。

アカエイは尾の根元にに強力な毒針を持っていて、これによる人間の死亡事故も何件か発生しています。しかし、どうやらシュモクザメはこの毒を意にも介さないようで。捕獲されたシュモクザメの口の中から数十本のアカエイの毒針が見つかった例もあるそうです。

またアカシュモクザメなどは群れを形成することで知られていますが、それでも狩りは集団で行わず、あくまで単独行動で獲物を獲得していきます。

 


↑水族館で同じ水槽にいたエイを食べてしまったところ。同じ水槽に入れちゃダメでしょ。。。

画像引用元:YouTube シュモクザメが冒険水族館でアカエイを攻撃します。

 

5.シュモクザメの天敵


↑針にかかって弱っているところをイタチザメに攻撃されているシーン

画像引用元:YouTube Tiger Shark vs. Hammerhead Shark | National Geographic

シュモクザメはそもそもの体が大きいため天敵はほとんどいません。危険があるとすれば、まだ自身が未成熟で体が小さいときに遭遇するサメなどです。また共食いの報告もあるので、自分より大きなシュモクザメも潜在的に危険な存在であると言えるでしょう。

またシュモクザメも他のサメの例にもれず、一番の天敵は人間になります。中国ではそのフカヒレが高級食材になるため、東南アジア諸国ではフィンニングのような度を越えた漁のターゲットにされることもあり、その数の減少が心配されています。

 

6.シュモクザメの生息域

シュモクザメ画像引用元:YouTube MASSIVE Hammerhead Shark Filmed in Bahamas!

シュモクザメは基本的には温かい海の沿岸部に生息しています。ヒラシュモクザメは熱帯近く、アカシュモクザメは熱帯から温帯にかけて、シロシュモクザメはそれよりも緯度が高いところでの分布が多く、種によって水温の好みが違っているようです。

どの種も季節的な回遊を行っていることがわかっていて、夏になると通常よりも高緯度の冷たい海のほうへ移動していくようです。

 

7.社会性のあるシュモクザメの生活

シュモクザメの群れ画像引用元:YouTube 神子元ダイビング ハンマーヘッドシャーク群れ  2010年7月28日

前述したとおりシュモクザメはサメの中では珍しく、大きな群れを作って行動することで知られています(ヒラシュモクは除く)。このサイズのサメが数百匹単位の群れで回遊している様子は圧巻で、その幻想的な光景はダイバーを例外なく魅了します。

日本では冬は八重山諸島の与那国島と、夏は伊豆下田沖にある神子元島がシュモクザメの群れを高確率で観測できるスポットになっています。ダイビングツアーなども組まれているので興味のある方はこちらをドウゾ。

シュモクザメが群れる理由はいまのところはっきりとはわかっていません。集団で狩りをするワケでもないですし、単体でいても脅威になるような敵もほとんどいません。もちろん安全に確実に遠距離の回遊を行う際には群れでいたほうがメリットがあると考えられますが、いまのところその理由の確信に触れているであろう有力な説は出ていないのが現状です。

 

8.シュモクザメの寿命と繁殖方法

シュモクザメ画像引用元:YouTube シュモクザメの謎|ジョナサン・バードのブルーワールド

シュモクザメは寿命は20年~30年程度と考えられています。コロンビアで捕獲されたメスの個体は40歳を超えていたとの話も。確かなことは何とも言えないのが現状です。

シュモクザメは胎生で1年おきに出産をするとされており、10カ月程度の妊娠期間を経て一度に10匹~30匹程度の稚魚を生みます。数十センチ程度の体長しかないシュモクザメの稚魚は外敵も多いため、浅瀬などなるべく安全な浅い場所にで産み落とされてそこで群れて過ごします。その際に母親ザメが何か育児的な行動をとることはないようです。

シュモクザメについて有名なニュースは、水族館で飼育され3年以上他の個体との接触がなかったはずのメスが妊娠して出産したこと。種はウチワシュモクザメだそうですが、無性生殖が可能であることを示した貴重なサンプルとなりました。もしかしたらシュモクザメ全般で同様のことが出来る可能性もありえますね。

 

9.シュモクザメの人間への危険性

シュモクザメ

シュモクザメは温厚で臆病な性格だと言われています。ダイバーたちの間では潜っている人間が出す呼吸音を聞きつけるとあっさりと逃げていってしまうのが定説となっています。

ただし、かといってシュモクザメに危険が一切ないというわけではなくて。世界的にはシュモクザメが原因と推測される咬傷事件は数十件ありますし、日本でも天草で起きた女子中学生の死亡事故がシュモクザメの仕業であると推測されています。

「基本的にはおとなしいサメ」であっても、カジキマグロを襲うこともできる大きな生き物であることには違いないので、やはり境界線をしっかり守った接し方をしたほうがよいと思います。仮にダイビングで出会っても、ちょっかいをかけたり、むやみに接近したりということは絶対にしないようにしましょう。たとえ1メートルに満たない大きさの個体であっても、海中ではシュモクザメのほうが確実に人間よりも強いです。

 

10.シュモクザメが観られる水族館

シュモクザメ

アカシュモクザメは比較的飼育がしやすいためか日本でも多くの水族館で見ることができます。シロシュモクザメはやや飼育難易度が上がるらしく一部の水族館でしか飼育がされたことがありません。また残念ながらヒラシュモクザメは国内では現在展示がされていません。

アカシュモクザメの展示

アカシュモクザメを現在展示している、もしくは過去に展示していたことがある水族館。タイミングによっては展示有無が変わることもあるので、アカシュモクザメ目的で訪問するのであれば事前に公式ホームページや公式Twitterなどをチェックしたほうがよいです。

・仙台うみの杜水族館
・アクアマリンふくしま
・アクアワールド大洗水族館
・アクアパーク品川
・葛西臨海水族園
・八景島シーパラダイス
・名古屋港水族館
・のとじま水族館
・越前松島水族館
・海遊館
・須磨海浜水族園
・島根海洋館アクアス
・四国水族館
・大分マリーンパレスうみたまご

シロシュモクザメの展示

同じくシロシュモクザメを展示している、もしくは展示していた水族館。こちらも最新の展示状況については公式ホームページなどから調べてみてくださいまし。

・アクアワールド大洗水族館
・鴨川シーワールド
・八景島シーパラダイス
・むろと廃校水族館

 

11.シュモクザメを食べる

シュモクザメを含む多くのサメはワシントン条約で規制対象となっていますが、日本はそれに対して留保しているため国内で漁が禁止されているわけではありません。

といっても日本国内ではシュモクザメを目的に行っている漁はなく、水揚げされるのは延縄漁などでたまたま混獲されたものになります。ちょっと前にシュモクザメが丸々1匹スーパーで売りに出されていて話題になりましたね。

サメの肉はアンモニア臭があって生そのままだと美味しく食べるのは難しいようですが、熱を加えてフライにしたり、オリーブオイルを加えたアクアパッツアにしたりすると普通にイケる模様。

 

12.シュモクザメの動画

動画1.シュモクザメの形の秘密 | ナショジオ

動画2.シュモクザメの頭はどうしてこんな形をしているの?(ft.シュモクザメの進化)

動画3.餌やりで興奮するアカシュモクザメ @海遊館

動画4.神子元ダイビング ハンマーヘッドシャーク群れ  2010年7月28日

動画5.Great Hammerhead Sharks | JONATHAN BIRD’S BLUE WORLD

 

13.シュモクザメまとめ

以上、シュモクザメの生態でしたー。

 

サメの中でも面白い形状をした特徴的なサメでございます。ちょくちょく人食いザメとして紹介されているのも耳にするけど、基本的にはおとなしくて人間には近づいてこないサメ(近づいてくる可能性ゼロとは言えないし、万一近づいて来られたときには十分に危険性はあるけれども)。

あ、毎回書いてますが、私自身の判断でWebやいろんな書籍から信頼に値すると思える情報をチョイスして書いております。もしかしたら後々に誤情報と発覚するような内容も含まれているかもしれませんが、どうか温かい目でご容赦くださいません(たぶんそれほど見当違いにズレた情報はないとは思うんだけど、いちおう)。

 

さーて、次はどのサメにしますかね。

したらな!

 


参考Web:
Wikipedia シュモクザメ
Wikipedia アカシュモクザメ
Wikipedia シロシュモクザメ
Wikipedia ヒラシュモクザメ
Wikipedia Hummerhead Shark
神子元ハンマーズ ロケーション
石垣島マリンタイム
カラパイア シュモクザメの頭部はなぜ、ハンマーみたいな形になっているのか?
GIGAZIN シュモクザメが「トンカチ」みたいな頭の形をしているのはなぜ?
デイリーポータルZ シュモクザメをおいしく食べるには

参考書籍:
ほぼ命がけサメ図鑑
サメガイドブック
世界サメ図鑑

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