【演劇】ラーメンズ第6回公演『FLAT』

ラーメンズ第6回公演『FLAT』

ラーメンズFLAT

画像引用:YouTube ラーメンズ『FLAT』より「透明人間」

 

前回の『TEXT』に続き、ラーメンズ作品アーカイブシリーズ。

今回は第6回公演の『FLAT』です。

自分用の観劇備忘録ではありますが、YouTube内に無料公開されてる動画をページ内に順番に埋め込んで個人的な感想など書きながらまとめてるので、もし良かったらご活用くださいー。

 

それでは『FLAT』、張り切ってスタート!

 

『FLAT』公演情報

ラーメンズ第6回公演『FLAT』

【演目】
1.初男
2.埋蔵金
3.海豹
4.アレグレット
5.ドーデスという男
6.新橋駅をご利用のみなさん
7.お引っ越し
8.棒
9.透明人間
10.プーチンとマーチン

作・演出: 小林賢太郎
出演: ラーメンズ(片桐仁・小林賢太郎)
舞台監督: 小林 勇
演出助手: 豊田竜太
美術: ニイルセン
衣装: 田名網恭子
音楽: 坪根 孝とRTNT楽団
デザイン: good design company、箱式図案工房
企画・制作著作: トゥインクル・コーポレーション

【東京会場】
2000年5月2日~5日 新宿シアターサンモール

【横浜会場】
2000年5月14日 はまぎんホールヴィアマーレ

※収録回は不明

 

『FLAT』YouTube動画

1.初男

暗転明転のポージングから始まる。片桐さんが演じる「初男」は初雪みたいな、気象庁が観測している年に1度だけ起きる初雪みたいな感じで空から男が降ってくるそうで。それを家に招き入れておもてなしをする文化があるが現代ではすっかり腐れてきてしまっていて・・・という、そんな設定のコント。招き入れられる初男は傲慢で短気だけど相手に泣かれると弱く、いろんなところで妥協をしながら、結局交通費まで自己負担にさせられる顛末。干してある布団を引き釣り落としてオシッコひっかけるって、もうちょっとしたテロやん(笑)

2.埋蔵金

旧友の元へ訪れてお金を貸してくれとせがむ男と、それを断る旧友のお話。山田埋蔵金を掘るだの大学へ行くためだのいろんな理由をつけて、あの手この手の屁理屈をつけてお金をせがむ姿が面白い。フタを開けてみれば友人のほうも埋蔵金を掘り当てた過去があっていまがあるというオチがおもしろい。




3.海豹

海釣りをしている二人の男。操舵室にはもう一人船長と呼ばれる男もいる模様。何もアタリがないのでそろそろ帰ろうかというときに大きな引きがあり、釣り上げてみるとそれはなんと海豹(アザラシ)。片桐さん演じる男は「ペットとして飼いたい!」というが、誤ってアザラシが死んでしまうと「食おう!」と切り替えが早い。会話の妙ももちろんだけど、小林さんのアザラシを捕まえてるときのマイムがめっちゃ面白かった(笑)また、身体表現だけであの可愛かったアザラシが一瞬でただの気持ち悪い肉塊に変えることができるのが、やっぱ舞台芸術って面白いなぁと再確認した。

あ、まったくこの話に関係ないけどアザラシの仲間にヒョウアザラシって種いるよね。あれの漢字表記が「豹海豹」って俺はスゲー違和感あるんだけど、動物関連の科学者たちはみんなスルーなんだろうか。。。

4.アレグレット

アレグレットの名の通り、ちょっと早めのテンポのメトロノームに合わせてマイム勝負をするコント。タバコ、掃除、定食、釣り、便所、速読、きこりのお題で、2番手にやるほうが大体理不尽でめちゃくちゃ。序盤で出てきたタバコ一気に複数本のやつが一番インパクト強くて面白くて、後半にいくほどネタが弱くなってくような気がするのはなぜだ(笑)




5.ドーデスという男

「どうです?」としか言葉を発しないドーデスと呼ばれる男の元に遊びに来てる既婚男性。ドーデスは何か病気を持っているのか定期的に薬を飲まないと発作を起こしてしまう。妻と別れてドーデスの妹と結婚したい男は、発作に苦しむドーデスから薬を取り上げて殺そうとしてしまう。ここまで観てきて、この『FLAT』はけっこう人間の腹黒い部分を描いてるシーンが多いなという印象。特に本作の既婚男性では親友のように触れていたドーデスをあっさりと自分の人生のために見放してしまう強烈な毒が描かれている。面白さの中に人間の汚さをグイッと混ぜ込んできて、それでも面白おかしく仕上げてしまうのが本当に巧みなところなんだけども、令和の世の中だとこういうのNGと非難する声も出るんだろうなぁ。

6.新橋駅をご利用のみなさん

新橋駅で酔っ払って終電を逃した男と、それを見ていた路上に座る易者の話。最初は酔っ払いの方がどうしようもない感じだが、話が進んでいくと易者のほうが遥かにどうしようもない感じに。どうしようもない同士のどうしようもない会話はやはりどうしようもなくて、幸せな着地点は用意されていない。どうしようもないことにならないように、ちゃんとやってくしかないってことかね。




7.お引っ越し

友人の引っ越しを手伝っている二人の男。家主はレンタカーを返却するためにその場を離れるが、残された二人は家主の持ち物の中から白い粉や注射器を発見してしまうという話。段ボールアートで遊んでるところからギターケースの中からブツを発見してどうしようと焦る展開がテンポ良くて頭カラッポで見て面白い。「ゆるぎねぇ!」「意味が違う!」って2人で倒れ込むとことか、ホントこういうのギャグテイストの会話劇ってテンポが命なんだなと感じさせられる。

8.棒

棒を使って亀をいじめているところに別の男がそれを止めに入るが、結局止めに入った男がまた亀をいじめ始めてしまう、を延々繰り返すコント。正義と悪が目まぐるしくチェンジする展開に、人間の脆い表裏の両面性を言いたかったのかなぁというメッセージ性を感じる。正義を示していた棒も、それを失ってしまえば簡単に悪に転じてしまうところもね。シンプルな内容のコントだけに、逆に一番メッセージが強い作品と言えるかも。




9.透明人間

部屋で受験勉強をしている学生、でもあまり集中力がなくエアライブなどしながら遊んでいるところに父親が入ってくる。医者である父親は息子に「勉強をして一流の大学に入り、一流の医者になるのだ」と告げ去っていく。ひょんなことからプレゼントでもらった聴診器を床に当てて父と母の会話を盗み聞きした息子は、なんと父親は自分に何かの薬をこっそり飲ませて実験をしていることを知る。父親の監視の目に焦る息子。どうやら父親の実験薬は透明人間になれる薬のようで・・・という話。

小林さんの一人ライブ会場マイムのギャグ的な展開から始まり、何かを企む父親とそれにおびえる息子のホラー的な空気に変わり、その後種明かしでまた一気にギャグに戻る感じで、その展開変化のギャップが面白い。観終わったときにすごいボリューム感のある話だったなぁと感じるのに、時間にするとたった15分ちょっとしかない。それだけ話が高密度で目まぐるしく展開してるってことなんだろうね。

10.プーチンとマーチン

白と黒のパペット「プーチン」と「マーチン」が突拍子もない毒満載の会話を繰り広げるナンセンスコメディ。リズミカルな会話の応酬と歌(ロシア民謡のメロディらしい)で人間のサガ的なものを語ってる。時間が欲しいというけどいざ与えられると何をしていいのかわからず結局は人間は命令されて縛られたい生き物なのか、人はモテない他人をみて安堵する生き物なのか、人は他人の威を借りて自分を大きく見せたがる生き物なのか的な、ちょっと社会的な毒部分を端的に突っ込んでく感じ。

『FLAT』という作品集のラストにこのコントを持ってきて、なおかつ最後は具もない麺もないスープは麦茶の限界ラーメンで2人で「限界!」と声を揃えて暗転する終わり方。『FLAT』って平面って意味だけど、平面にある表裏、つまりは人間の善悪の両面性を描いたんだろうなぁと感じたけど、この最後の「限界!」という叫びにはどんな意図を込めたんだろうか。いろいろ考えちゃうよねぇ。




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