ザ・クロコダイル 人喰いワニ襲来
現存するサメ映画をとことん見漁っていこうのシリーズ!
サメ映画を観ようという企画だからサメ映画を観るのが当たり前なわけですが、
そんな当たり前を華麗に裏切って今回はワニ映画だよ!
ザ・クロコダイル 人喰いワニ襲来を観ました。
なんで今回はワニ映画かって?
いや、サメ映画見過ぎてお腹いっぱいになってきたからちょっと他の映画も観てさ、
モンスターパニック映画って本来どんなもんだったけ?って感覚を取り戻したほうがいいじゃん?
お寿司食べる時も途中でガリ食べて舌の感覚リセットしたりするじゃん!
あれと同じさ!
はい、早い話がただの箸休めです。
だってたまには観たいじゃん、ワニの映画も。
ちーん。
まぁ、この『ザ・クロコダイル 人喰いワニ襲来』がアマプラで見放題が近々終わってしまうから、
ってのも大きいですが。
Netflixもそうですが、以前からこういうサブスク系ってなんで次々作品を配信終了させちゃうんだろうなんて思ってたんですけどね。
理由は明白、俺みたいにケツに火が着かないと動かないタイプが多いからだわ、きっと。
今回もたぶん配信終了をチラつかせられなかったら観てないだろうし。
人間ってほんと追い詰められないとダメねぇ。。。
はい、気を取り直して『ザ・クロコダイル 人喰いワニ襲来』!
まずはあらすじから!
いつも通りこれ以降はラストまで盛大にネタバレしまくり
ネタバレイヤならお使いの端末を海に投げ捨てろ!
舞台は中国杭州。
警察巡査長として働いているワンは、すでに妻と離婚していて息子のシンと二人暮らし。
シンは近所のワニ園によく遊びに行っていて、
そこにいる8メートルクラスの巨大ワニ「マオ」が大好きだった。
しかし、そのワニ園は経営難で閉鎖することに。
ワニ園の園長リウは苦渋の決断で園内のワニたちをワニ料理専門店に売り飛ばしてしまう。
ワニ料理専門店では次々にワニが解体されていく。
次はマオに刃が向けられるかという刹那、マオは縛られていたロープを引きちぎり、
そのままフェンスを突き破って逃走してしまう。
一方、ドライブ中に恋人と喧嘩して置き去りになってしまったウェンがトボトボ畑を歩いていた。
そのバックには8年間必死に貯めた大切な現金が入っていた。
そこに突然現れるマオ。
マオに驚いたウェンは電柱に上って難を逃れるが、その際に大金が入ったバッグを丸ごとマオに食べられてしまう。
どうしても現金を取り戻したいウェンは警察へ駆け込む。
そこでワンに事情を説明し、一緒に付近を調査してもらうことに。
最初はウェンの話に半信半疑だったワンだったが、
道中で自分のヤギが行方不明になってしまったと訴える男性と遭遇。
河に浮かぶヤギの死骸を見つけたワンはワニの存在を確信し、町ぐるみの本格的な操作を開始する。
ワニの体内に大金が眠っていることを知ったワニ料理専門店の人間達は、銃を持って独自に森の中を追う。
それに遭遇したシンとウェンは、マオをおびきよせるための餌としてロープで逆さ吊りにされてしまう。
そこにマオが現れ絶体絶命に思われたが、マオは吊るされた二人をスルー。
ワニ料理専門店のボスだけを襲って池の中に逃げていった。
ワンは、ワニ逃亡の知らせを聞いて駆け付けたリウと協力して池を捜索。
園長はワニにはちゃんと情があるため説得して連れ帰ることは可能だという。
うまく陸上にマオを呼び寄せたワンとリウだったが、
そこにワニ料理専門店の残党が刃物を持って現れることでマオが興奮、
リオは弾き飛ばされ、ワンもピンチに陥ってしまう。
決意したワンはマオの口の中に銃口を向け発射、マオの命を絶つ。
平和が訪れた町では、ワンとウェンが良い仲になってシャオもにっこり。
しかし、そのとき池のほとりではマオが産んだ卵が孵化していて・・・
おしまい
くだらないB級モンスターパニック映画といえばアメリカが本場(?)なのですが、
この『ザ・クロコダイル 人喰いワニ襲来』はなんと中国が制作した映画。
制作されたのは2012年ですが、この時点で中国初のモンスター映画なんだそうです。
へー、意外。
韓国だと2006年に『グエムル』とか作られてましたが、
中国でこの年までこれ系のジャンルがまったくなかったってのは不思議ですね。
なんか政治的な事情でもあるんでしょうか。
あ、昨今ではアメリカ合作で『グレートウォール』とか『MEG ザ・モンスター』とかも作られていますね。
中国産モンスター映画もどんどん勢いづいていけばいいなぁと期待。
ちなみに本作の原題は『百万巨鰐』。
百万ってのは、ワニの大きさでもなく、殺戮した人間の数でもなく、ミリオンダラー的な意味。
シンプルに「大金を所持している大きなワニ」といったニュアンスですね。
そう考えると邦題の『ザ・クロコダイル 人喰いワニ襲来』はかなりズレてます。
そもそも今回の主役モンスターであるマオは、自分を食べようとする人間から逃げているだけで、
結果として自分に直接危害を加えてきた悪人しか食べてないんですよねぇ。
本作は全編通してほとんどワニの逃走劇です。
明らかに「人食いワニ」が「襲来」するお話ではありません。
この邦題つけた人、どっかで偉い人に一度怒られてほしい(苦笑)
ワニCGなどは2012年としてはしっかりしているほうの部類で、そのあたりはちゃんと観れます。
ただ脚本と演出は、えらい中途半端な路線を走っちゃったなぁって感じですかねぇ。
ワニが情を備えている設定自体は別にいいんですけどね、
だったらシンのような存在をもっと物語のキーパーソンとして使わなきゃいけないんじゃないかなぁ。
人間とワニの心が通じ合っているからこそ、の展開を用意するべき。
でもそういうのが全然なくて。
ワニに情がある設定が映画としてストーリーを面白くする要素にまったくなってない。
ワニってなんでもかんでも人襲うわけではないのねー、程度にしかなってないんですよね。
中途半端に「ワニが人を襲わない良いヤツ感」があるせいで、当然ホラー映画としても成立しませんしね。
ヒューマン要素もホラー要素も入れて、結果どっちにもなれなかったみたいな感じ。
そこに全体的にコメディ感漂う演出が加わるので、
より一層中途半端で何を目指したのかよくわかんないテイストに。
演劇作品でもよく見かけますが、一番ダメなパターンのヤツやね。。。
ラストの終わり方もなんだかいまいち。
銃弾一発で倒しちゃうのはモンスターパニックとして盛り上がりに欠けるし、
ワニの情をテーマにするなら、あれだけ「マオ!マオ!」と連呼していたシンの感情描写がなさ過ぎて。
なんで秒で笑顔の後日談にいっちゃうの!(汗)
全体的にキャラクターは好きだったけどね。
主人公ワンは、顔が知人に似すぎていて映画に集中できなかったんだけど(笑)、
人情あふれつつも不器用な人柄がパニックホラー系作品にはとっても良い主人公。
その息子シンは堂々たるフルンティングシーンを披露してくれていました。
ワニ料理屋の悪党一味もね、ボスはいかにも典型的なステレオタイプなやつ。
悪人として正統派過ぎて逆に清々しさを醸し出しております。
その舎弟たちも無能ながらにボスへの服従っぷりがイカス。
っていうかなんでスーパーマンのシャツ着てんの(笑)
あとワニ園の園長リウ。
多くは説明がされないけど、とりあえず家族をないがしろにしてワニの面倒を見てきたことだけは伝わった。
奥さんや娘に余計な説明台詞を与えなかったのは脚本として正解だと思う。
こういう想像の余白ってホント大事。
あー、ヒロインのウェンだけはね、もう少し落ち着いてたら良かったのになぁ。
お金への執着が強いキャラは別に構わんのだけど、ヒステリック路線だけはちょっといただけない。
前半はかなり長時間に渡って「金!ワニ!金!早く!」の連呼で、
視聴者に「こいつ喰わればいいのに」って思わせるヒロインはある意味斬新です。
うん、総評としては「大金を食べちゃったワニを追うコメディ!ちなみにワニは悪い奴じゃないよ!どっちかというと人間のほうが汚いよ!」っていう映画です。
「人喰いワニ襲来」みたいな邦題を信じて観ちゃうと、そのギャップでえらい腹立ってくるのでご注意を。
邦題つけた人、責任重いと思うぜ。。。
珍しい中国産のモンスターパニック映画。
ご興味あればぜひーっ。
『ザ・クロコダイル 人喰いワニ襲来』
2012年中国制作
監督: リン・リーシュン
キャスト: グォ・タオ、ウェン・ヤン、ラム・シュー
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