【演劇】惑星ピスタチオ『KNIFE』がYouTubeで無料配信

惑星ピスタチオ『KNIFE』がYouTubeで無料配信

 

 

先日は惑星ピスタチオ『破壊ランナー』公開されましたが、

それに続いて『KNIFE』の動画もYouTubeにて公開が始まりましたね。

 

アーカイブで残されていて期限も設定されていないので、とりあえずは半永久的に無料でいつでも見ることができます。

本当にありがたいことで。

感謝しきり。

 

 

西田シャトナーさんも、プロデューサーの登紀子さんもコメントを書いてます。

→西田シャトナーが夢から醒めない。23年(素数)振りの『KNIFE』。

→note 惑星ピスタチオ『KNIFE』公開について

 

 

『KNIFE』は近未来SF作品。

ざっくりネタバレであらすじを書けば、

 

 

 

とある罪から宇宙監獄に収監されることになった主人公・ナイフ。

彼は事件の時の具体的な記憶を失っていたが、それでもその罪を真摯に償うつもりであった。

 

ところが収監された直後、同じ牢獄メンバーの脱獄計画に巻き込まれてしまう。

その結果、脱獄計画は失敗、監獄は大爆発事故を起こし、脱獄メンバーは全員死亡、

成り行きでナイフだけが助かり脱出艇で外へと出ていくことに。

 

事情を説明して監獄に戻りたい意思があったナイフであったが、

行く先々で様々なトラブルに巻き込まれ、結果として逃亡を続けていく形になってしまう。

最初はナイフをかばう立場であったサリー護衛官も、その正義感が激しい執着心に変わり、狂気をまとった追跡者へと徐々に変貌していく。

 

様々な星と時代を渡り歩いて、自分が起こした事件の記憶も取り戻し、

それによりさらに精神的に苦しんでいくナイフ。

 

そして最後には、地球系宇宙人であるナイフにとって種の故郷ともいえる地球にたどりつく。

しかしそこに彼を追うサリーの飛行船もゆっくりと降りてきて・・・。

 

 

 

的なお話。

 

 

この『KNIFE』は映像が過去に一般販売されいて、

以前ヤガクなどで共演したリッキー(石谷力)がそれを持っていたので借りて見たことがある。

 

そのときも観た感想は「とにかく圧巻」だったけど、

今回再度観終わった感想は「とにかく圧巻っていうか、圧巻過ぎてもうヤバイんだけど」だね(笑)

観終わったあと、しばらく何もする気もなく終演後の画面をずっと眺めていた。

 

これをゼロから作り上げた演出家と役者・スタッフに驚きしか感じない。

20年以上前にどうしてこれを思いつき、実践できるのか。

いやぁ、もう泡吹いちゃうわ。

 

 

序盤はてんやわんやのドタバタ冒険コメディ的な感じなんだけど、

様々なトラブルに巻き込まれるナイフの心情描写がひとつずつ積み重なっていくたびに、

ものすごく悲しい業を背負ってしまった男のヒューマンドラマに変わっていく。

(ヒューマンドラマって表現も陳腐でごめんね)

 

冒険モノの特徴って、様々な場所で様々なトラブルに遭遇し、それを主人公が解決していくものだと思う。

でもこの『KNIFE』という作品では、何ひとつトラブルは解決しない。

主人公ナイフが助けたいと思った人は誰も助けることができず、彼の意志に反して次の土地へと飛ばされてしまう。

 

『ONE PIECE』でいえば、ゾロが張りつけにされたまま次の島へ飛ばされてしまったり、

魚人からナミを解放せずに次の島へ飛ばされてしまうようなもの。

ただひたすら主人公の中に、救いたい人を救えなかったという経験だけが重ねられていく。

 

劇中には終始おもしろネタが散りばめられているためにそう感じ辛いんだけどね、

実はこの作品は「人を救えなかった経験をひたすら繰り返していく」という、

想像するだけでも冷たく重たい非情な物語だったりする。

 

 

それを経たあとのラストシーン。

 

 

かつての人類の原点であり故郷である地球に降り立つナイフの飛行船。

そして地上に立ったナイフの目の間に現れ、ゆっくりと旋回着陸を始めるサリーの飛行船。

これまでのスピーディーな展開はここを立たせるためだけにあったのかと思えるほど、

ゆっくり、ゆっくりとサリーの船は降りてくる。

 

絶望の中で焦燥していたナイフの眼には、あの飛行船はどんな風に映ったんだろうか。

地表を無様に転がりそれでも眼光鋭く銃口を向けるサリーの顔はどんな風に映ったんだろうか。

自分の人生に無情な終止符を打つ悪魔?

それとも、この不毛な人生を終わらせてくれる救いの神?

 

このときのナイフの心情に想像が膨らんでいく先に、役者全員で「ナイフ!」の声。

そりゃあ、観てるこちらは目頭が熱くならずにはいられないでしょうよ。

 

もう拍手だ。

力いっぱい拍手、一人で喝采。

 

 

 

プロディーサーの登紀子さんが自身のnoteで、

 

 

ただ、一人でも多くの方にご覧いただけますように。

私の自慢の大好きな仲間が、

一人でも多くの方の心に触れますように。

私が素晴らしいと心を燃やす気持ち、

それを共有できますように。

 

と言ってくれています。

 

自分もまったく同じ気持ちだなぁ。

しょせん自分はこの作品の出演者と共演させてもらったことがあるってだけの、いわゆる只の部外者だけど。

この作品が少しでもたくさんの人の目に留まってほしいなって気持ちは強く同感。

 

ほかの芸術作品とはまったく別の「演劇の力」ってやつを、ありありと感じさせられる作品。

まだご覧になったことのない方は、ぜひ。

 

 


≪追記≫
この『KNIFE』は1998年の再演版で、退団者が続いた後にたった6人の役者で作られた作品。

佐々木蔵之介さんや平和堂ミラノさんがいた初演版のほうが良かったという声もよく耳にするけど、そのへんに追求するのは無粋なのかもね。

初演版に興味がないといえばウソになるけど、再演版は初演版とは別の作品として独立しているわけだし、

それが素晴らしいのであれば「初演版のほうが・・・」とかいうのは無粋な気がする。

 

俺が知ってる『KNIFE』はこれだし、間違いなく素晴らしい作品。

それでいいんじゃないかな。

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