【ライフハック】窓ガラスに養生テープを貼ると応力集中で割れやすくなるというのは本当か?

窓ガラスに養生テープを貼ると応力集中で割れやすくなるというのは本当か?

2020年も台風シーズン到来

台風

9月に入り日本もぼちぼち台風シーズンとなってきました。

すでに台風9号が沖縄九州で猛威を振るい、

さらに追加で発生した10号が週末に九州西側を通過する見込みとなっています。

 

 

去年の甚大な台風被害は記憶に新しいですね。

東日本では多くの河川が氾濫し、武蔵小杉のタワーマンションは地下浸水。

千葉県ではゴルフ場の鉄柱が軒並み倒れて民家を直撃し、

猛暑の中での数日間に渡る停電で熱中症を引き起こして亡くなってしまった方も多くいました。

 

 

異常気象が当たり前になってきている昨今なので、おそらく今年2020年も「観測史上初の○○!」みたいなのが1つや2つ来てもおかしくないんじゃないでしょーか。

地球温暖化が原因として有力みたいですが、こればっかりは今すぐ何かやって明日の台風の発生を無くせるってもんじゃないですもんね。。。

 

台風対策は入念に。窓にはテープで目張りを・・・え?

災害対策

まぁ、台風が生まれませんようにと神に祈ったところで全く助けてくれなそうな感じなんで、

結局は対策は自分たちでしなきゃなりません。

 

 

まずは備え。

水、食料、ライト、モバイルバッテリー、トイレアイテムなど、

2~3日自宅で引きこもることになってもなんとかなるだろう的なグッズは用意しておきたいところ。

非常食についてはプロテインバーがいいよって話は前に書きましたのでドーゾ。

→非常食の最強オススメはプロテインバーだという結論

 

 

あとは住宅自体がぶっ壊れないようにしなきゃですが、

雨戸があるなら閉めておくべきですし、ベランダにある小物はすべて撤収しておきたいところ。

サンダルだって風で飛べば十分な凶器になりえますので。

 

 

 

窓ガラスに養生テープ

また、窓ガラスにはこういう風にテープで目張りをしておきましょう。

これならガラスが補強されて安心だよね!

 

 

 

・・・・。

 

 

そう思っていたところに、突然現れたわけですよ。

こんなショッキングな情報が。

 

 

 

 

なんと、窓ガラスに養生テープで目張りをするとかえって割れやすくなってしまうという情報。

何か補強をすれば丈夫になるだろうという常識を、完全に覆しにきました。

 

 

これはやはり衝撃的な情報だったらしく、台風接近の真っ只中での善意もあってか一気にSNSで拡散されました。

中にはマンガに書き起こして解説している方もいたため、拡散力はさらにアップ。

自分のまわりでもRTしてる人は数多くいましたので相当な広まり方だったと思います。

 

 

実際に、養生テープで窓ガラスが割れやすくなるものなのか

 

ツイート主が説明する理論を要約すると、

窓ガラスに養生テープを貼ると均衡が崩れて応力集中が起きて、そこが弱点になってしまい窓ガラスが割れやすくなってしまう

ということだそうです。

 

 

 

お、おう。そうか。

 

 

ん?

 

 

 

養生テープがガラスにおうりょくしゅうちゅう・・・?

 

 

 

個人的にはこの情報、すぐに「え?それおかしくない?」って思いました。

 

 

 

まがりなりにも工学部で5年間勉学に励み(1回留年とか言うな)、

弾塑性学の授業を3年間受け続けた(2回単位落としたとか言うな)、

そんな私です。

 

いろいろ下調べをしつつ、窓ガラスが本当に養生テープごときで割れやすくなってしまうものなのか考えてみました。

 

 

そもそも応力集中とは何か

物体に外部から力を加えると、それに対抗するように内部で逆向きの力が作用します。

この力のことを応力と言います。

「内部で逆向きの力・・・?え?え?」と疑問符が脳内を飛ぶかもですが、続けます。

 

 

次に応力集中とは何かというと、

 

応力集中とは-

応力集中(おうりょくしゅうちゅう、英: stress concentration)とは、物体の形状変化部で局所的に応力が増大する現象である。機械・構造物の疲労破壊や脆性破壊では、この応力集中を起こす部分が破壊の起点となることが多い。

引用:Wikipedia

 

はい、もう何のことやらさっぱりですよね(笑)

いいです、応力も応力集中も正確に理解しなくていいです。

 

とりあえず応力集中はイメージとして

「ある物体においてどこか形がおかしなところがあると、何か力がかかったときにそこに負荷が集中するよ!」

って感じかな。

 

 

日常生活における応力集中の例えとしては、

マヨネーズの小袋とか、カップめんのかやくの袋とかが分かりやすいです。

袋に切り口が用意されており、力を加えれば簡単に袋を破くことができますよね。

 

これは力を加えたときに発生する応力が、切り口部分に集中するためです。

切り口という「他と形状が違う部分」に応力集中が起きるわけですね。

 

ピンとこなけりゃこちらのリンク先もどうぞ。

応力集中を具体的な例を出して解説してくれています。

応力集中を体験してみよう―使いたいときに簡単に開けられるしくみ―

 

 

あとは消しゴムとかもイメージしやすいかな。

消しゴムって最初は丈夫でゴシゴシやっても平気なのに、

ほんのちょっとでも割れ目ができちゃうと驚くほど弱い力で割れちゃいません?

これも応力集中によるもの。

 

 

物質ってのは形状がキレイに整っていれば負荷がバランスよく分散されるんですが、ちょっとでも傷があったり、逆に突起があったりすると、そこに負荷が集まってしまい壊れやすくなってしまうんですよね。

 

「直線や曲線などシンプルな形状であれば丈夫、でもそこに凹凸があると壊れやすくなる」

ざっくり乱暴な説明ですが、応力集中についてはこんなイメージでおおむね大丈夫!

(物理詳しい人にはめっちゃ怒られそう)

 

ガラスに養生テープを貼ることで応力集中が起きるものなのか

さてさて、応力集中が何かというのはイメージができたところで。

そもそも養生テープが窓ガラスに対して応力集中を引き起こせるのかどうかがポイント。

 

1.ガラスに比べて養生テープが柔らかすぎ問題

ガラスに養生テープを貼ったときに応力集中が起きるというのは、

・養生テープのせいで物体の形状に凹凸が生まれるだろう

・ぴったり貼られたテープがガラスの伸縮を制限するだろう

って理屈からなんだと思います、たぶん。

 

たしかに形状に凹凸が生まれちゃうのは事実ですし、

テープがガラスを固定することで生まれる影響もいくらかあるでしょう。

そう考えると、なんか応力集中起きそうな気がしちゃいます。

 

 

でもね、ここで大事なことが無視されてしまってるんですよ。

それはガラスと養生テープの材質の違いです。

 

 

当たり前ですが、物質ってのは硬いモノ柔らかいモノ様々です。

 

 

材料力学の中ではヤング率という材料の性質を表す数値があります。

正確に説明すると専門用語で話がグジャグジャになっちゃうので省いちゃいますが、

ざっくり「ヤング率の数字が高い物質ほどカチコチで変形しにくい」ってイメージで構いません。

(物理詳しい人にはめっちゃ怒られそう二度目)

 

 

ヤング率の一覧表
(引用:Wikipedia

 

このヤング率は、上の表のとおりでガラスが80GPa、養生テープ(ポリエチレン)が0.4~1.3GPaとなります。

数字にして100倍レベルになる圧倒的な差ですよね。

つまり養生テープって、ガラスに比べてめっちゃ柔らかくてめっちゃ伸びる物質なワケです。

 

 

 

養生テープ君

ここにガラスに貼られた養生テープ君がいたとします。

 

お調子者の養生テープ君、

「はーい!おれ養生テープ!いまおれはガラスに貼られたことでガラスの形状に凹凸を作ったぜ!さらにガラスに力がかかって弛んだときにはおれがしっかり支えてやるんだぜ!」

なんてチャキッたことをほざいているかもしれません。

 

 

 

 

 

・・・そんな彼に一言だけ言いたい。

 

 

 

てめえにゃ無理だ。(´・ω・`)

 

 

 

だってさ、考えてもみてください。

 

窓ガラスに対して、強風などでガラスが弛んでしまうぐらいの大きな力がかかったとして。

そんなレベルの大きな力に対して、柔らかくてびよんびよん延びちゃう養生テープ君がガラスの形状の一部を担えるはずがないんですよ。

だって延びちゃうんだもん、されるがままに簡単に。

びよーーーんって。

 

 

養生テープ君が自分の身体をガラスと同じ硬さで保っていられるなら話は別ですけどね。

ガラスの100倍柔らかいその体は、なすすべもなくガラスの弛みに合わせて延ばされちゃいますし、

当然ながらガラスの弛みを押し返せるような力もありません。

 

弛んだガラスに対して寄り添ってただ延ばされるがままで、何の影響力も出せない。

そんなんでガラスに応力集中なんか引き起こせるかーい。

 

 

もちろんいくら養生テープが柔らかいといっても一定の硬さがありますので、完全に影響ゼロとは言いませんけどね。

残念ながらガラスと養生テープのヤング率の差があり過ぎです。

そんなのゾウの体重を量るときに肩にアリが乗ってますねレベルの誤差でしかないでしょう。

 

2.そもそも応力分散を理想的にできている窓ガラスなど現実存在しない問題

窓ガラス

「ヤング率なんて難しい話されてもよくわかんないよー」って方に、別でもうひとつの根拠を。

ぶっちゃけこちらの説明だけでも、テープでガラスが割れやすくならない理由としては十分です。

こっちの話のほうが感覚的にわかりやすいかな。

 

 

「窓ガラスに養生テープを貼ると応力集中が起きちゃうよ!」って主張ですが。

これに対して声を大にして言えることがひとつあります。

 

 

窓ガラスなんて、最初からにすでに応力集中起きまくってる件。

 

 

はい、ガラスと言えばAGC。

「なんだしなんだしAGC」のCMでおなじみ、あの素材の会社AGCです。

そのAGCがこんな資料を出してます。

 

ガラスの実用強度

ガラスの破壊は、ガラスを構成する原子と原子の結び付きを引き離すことで起こります。原子と原子との間に働く引力(原子間力)から理論的に計算された強度は、約29,420N/mm(約2300,000kgf/cm2)にもなります。これをガラスの理論強度といいます。しかし、建築に使われる板ガラスの実用的な強度は、49~98N/mm2(500~1,000kgf/cm2)程度しかありません。なぜこのように理論強度と大きな差があるのでしょうか。これは、ガラスの表面に無数にある、目にみえない微小な傷が原因です。

引用:ガラスの硬さ

 

これびっくりですよね。

現実に使用されているガラスは微細な傷による応力集中で、なんと理論値の300~600分の1ぐらいの頑丈さしか出せていないとのこと。

ガラスさん、実は全然本気出せてなかったのか(汗)

 

 

仮に、もし応力分散が完璧にできているガラスが現実に存在すれば、

養生テープの影響によってほんのわずかな偏りが生まれて応力の均衡が崩れ、

その結果ガラスが壊れやすくなるかもしれません。

 

 

ですが、現実にそんな理想的なガラスは机上の空論。

 

ガラスには製造時点で無数の目に見えないレベルの傷(凹凸)があり、

さらに大工さんが運搬や施工をするときにも何かしらの接触で傷は入るだろうし、

設置後も住人が触ったり、普段の雨風や砂ぼこりで劣化損傷が発生するでしょう。

さらにガラス自体の自重による負荷、上下左右を窓枠に挟まれることによる負荷も常に発生します。

 

 

つまり、世の中に存在する窓ガラスはとっくに応力均衡とは遥かに遠い状態なわけです。

 

バランス

「養生テープを貼ったら応力の均衡が崩れちゃうかも」とか考えるだけ無駄なんですよね。

そこには最初から均衡なんか存在してないんだもの。

 

無数の傷、ガラスの自重による負荷、窓枠による負荷、etc。

養生テープごときに、これらを超えるような影響力があると思いますか?

養生テープを貼ることで初めて応力均衡が崩れるなんて考え方は、はっきりとファンタジーであると言えます。

 

結論。養生テープ貼っても窓ガラスは割れやすくならない

窓ガラスに養生テープ

はい。

結論として、養生テープを窓ガラスに張っても割れやすくなることはないと断言できます。

 

 

要点をまとめると、

・ガラスに対して養生テープが柔らかく伸びやす過ぎる材質のため、形状変化の視点でも、ガラスを伸縮を固定する視点でも、有効な影響を与えられない

・ガラスが理論値レベルで完璧な応力分散がされているとしたら養生テープでその均衡を乱すことはできると思われるが、実在する窓ガラスにおいては既にそれより遥かに大きな要素(無数の傷、ガラス自重、窓枠など)による影響で応力集中はすでに発生しており、そこに養生テープごときが加わったところで何の影響も与えられない。

って感じかな。

 

 

はい、もう一回言っておきます。

養生テープを貼ることで応力集中が起きて窓ガラスが割れやすくなるなんてことはありません。

 

 

つーかさ、もしこの養生テープの理屈が通っちゃうとしたら、

「硬いモノを壊すときは柔らかいモノくっつけるといいよ!」になっちゃうよね。

鉄にゴムくっつけたら、その鉄が割れやすくなると思います?

ちょっと想像すればおかしいなってことは分かる話。

 

逆はありますけどね。

柔らかいモノに硬いモノをくっつければ柔らかいモノの伸縮性を殺して切断しやすくできる、とかはあります。

でも硬いモノの伸縮性は柔らかいモノでは殺せないんですよ。

硬いモノの伸縮性を殺したかったら、より硬いモノをくっつけるしかありません。

 

養生テープは台風対策としては気休めレベル?

台風対策

「窓ガラスに養生テープ貼っても割れやすくはならないよ」って結論なわけですが、

誤解されるかもなので念を押しておくと、養生テープで窓ガラスが丈夫になるわけでもありません。

「養生テープを貼ったからこれで安心ね」ってことじゃないので、そこはしっかりご理解を。

 

基本的には台風で窓ガラスが割れるのは風圧ではなく、風で舞い上がった飛来物が原因になるそうです。

飛来物が来りゃ養生テープのあるなしなんて関係なくあっさりガラス割れますもんね。

でも、そのときに養生テープで目張りがしてあれば、ガラスは割れはしますが、割れた破片の飛散は抑制できるようです。

 

 

 

上はガラス屋さんのツイートですが、やはりあくまで養生テープは破片飛散の抑制という考え方。

また、飛散を抑制するといっても所詮は気休めレベルのようで、

超絶な強風のときはテープを貼っていようが貼ってなかろうが関係なく破片が飛ぶとのことなのでご注意を。

 

養生テープは「どうしても飛来物が不安な窓だけ貼っとく」ぐらいでいいのかもしれませんね。

台風対策としては有効性はやや低めかもです。

ましてや売り切れていたからと言って、転売ヤーから高額で購入するほどの価値はないんじゃないかなぁ。

 

 

 

これらの①③④のほうが、よっぽどやる意味がありそう。

とくに①のベランダ排水溝の掃除はけっこう重要な気がする。

浸水って一度始まったら後からはホントどうしようもないもんね。。。

 

あと他人の家に迷惑かけないようにベランダから物を無くすのも必須事項ですね。

場合によっては人の命を奪うことにもなりかねませんので。

 

 

南の海の海水温度が高くなっているということで、

台風は10号以降もヤバいやつがどんどん生まれそうな気配です。

正しい知識で正しい対策を。

とりあえず養生テープは貼ってもOKだけど、気休めぐらいの認識で!

 

したらな!

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